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貿易戦争の武器? 人民元急落

対ドルの人民元相場がほぼ5週間ぶりの安値に沈んでいる。

本日も6.48台と今年最安値水準だ。昨日はおおむね6.47台で推移していた(レートが上がると人民元安となる)。

時期が時期だけに、米中貿易戦争の武器として通貨安が使われる可能性が連想される。市場も疑心暗鬼だ。米国への報復措置として「量的」のみならず「質的」措置も検討との中国側が明らかにしたばかりだ。その「質的報復措置」の中に、米国製品不買運動、米国企業ハラスメントなどと並び、通貨安政策も取り沙汰される。

しかし、人民元安政策は中国経済にとって緒刃の剣だ。人民元が安くなれば、中国国外へのマネー流出は加速する。中国発世界株安連鎖の事例もあった。キッカケは上海株安だった。しかも直近で上海株や節目の3000の大台を割り込んだ。中国政府当局も個人投資家に冷静に行動するよう情報発信している最中だ。

従って、米中貿易戦争に人民元安で対抗することは現実的ではない。

しかし、トランプ大統領の挑発的発言に対抗して、通貨安の可能性を示唆する程度ならあり得ることだ。その程度でも市場は動揺するだろう。

外為市場が人民元について注目するレートは、中国人民銀行の設定する基準値とオフショア人民元とのスプレッド(格差)だ。

本日の基準値は6.4706元と5か月半ぶりの元安設定なのだが、スポット市場の6.48台に比べると元高の設定となっている。中国人民銀行が相対的に人民元高に設定して、「安定感」を演出しているが、市場は基準値より人民元安に動いている。市場は米中貿易戦争懸念でマネー流出が加速している兆候である。

中国人民銀行は設定基準値が低すぎると人民元への信認が薄れるが、高過ぎると、輸出が減るというジレンマをかかえ、綱渡りを強いられている。

しかも、外的環境として米利上げとECB発ユーロ安が悩ましい。

米国サイドからは、利上げでドルは上昇、人民元に下げ圧力がかかる。欧州再度では、ECBが利上げは来年夏と明示しているのでユーロ安が加速した。欧州は重要な貿易国ゆえ、ユーロ安による中国製品の国際競争力弱化は由々しき問題だ。特に、貿易戦争による米国からの輸入減を補うために欧州との貿易は重要性を増している。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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