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社会課題にデータ活用

(WAVE)瀧俊雄氏

今年の未来投資戦略の骨子が明らかとなった。政府が毎年発表するこの戦略は行政や経済活動の多くの変化のきっかけとなることから、企業経営上の重要な道標となる。多岐にわたるテーマを対象に積極的な社会変革に向けた政府の意思が見え隠れし、ビジネスをする者として素直にワクワクする。

今年の内容でひときわ目を引くのはデータ覇権主義といえる環境への認識とその対応だ。株式時価総額の上位7社は、大量かつ豊富なデータを蓄える米国や中国のIT(情報技術)企業となった。米国のグーグルやフェイスブック、アマゾン・ドット・コムなどに代わる競合サービスを今から使うことが想像しにくいように、データが一度囲い込まれるとユーザーは他のサービスに移りづらくなり、競争が働かなくなる懸念がある。この問題意識から欧州では個人情報の用途を自分でコントロールできる制度の整備も進みつつある。

対抗馬となるプレーヤーを日本から輩出できるようにデータを駆使する人材や事業への支援は急を要する。当社もお客様のデータを価値あるものとして還元する事業者として、感動を届けるサービスを提供できるように襟を正している。ただ、IT大手が兆円単位の資金を人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」に投じている中で現実的な戦いをしていくしかない面もある。戦力の逐次投入とならないように社会全体での選択と集中も問われている。

データは21世紀の石油だといわれるが、このたとえは誤解も招きやすい。石油といわれると占有する主体が経済活動を独占する連想が働く。産油国のようにビジネスとは無関係に権益が配分される印象もある。

現実はそれとは異なる。データは交流サイト(SNS)に代表されるように栄枯盛衰も激しい。不要に個人情報を蓄積するサービスには様々なけん制も働き、大規模にすることが難しい。データの覇権を握っている企業は劇的な利便性をもたらしており、なくなれば日常生活が困る存在だ。データの蓄積は手段ではなく、高い利便性の結果と見るべきではないだろうか。

世界では20世紀半ばまで米国の「セブンシスターズ」と呼ばれるオイルメジャーが産業構造を支配していたが、徐々に産油国が権益を国有化していった。一方で中国のオイルメジャーが資源外交と共に存在感を増してきた。

この動きは西側諸国でデータの個人に帰属する制約が強まる一方で、中国勢が決済や通信端末などを通じて地域を越えてデータを集めている姿と重なるかもしれない。日本は少なくとも戦前には資源を獲得する行動が要因の一つとなって破滅的な帰結を招いた。データの領域では異なる結末を迎えられるだろうか。

先ほどの手段と結果のロジックに基づけば、その答えはより高い利便性をユーザーに発揮できるサービスを展開するほかない。日本は様々な社会課題を解決していくことが急務だ。高齢化に伴う体力や認知力の低下、長く働き続ける工夫、様々な人の意思決定の高速・高度化など対象は幅広い。より正しく、分かりやすく、速い判断や結果をデータを用いて提供できるように社会の資源を集中していくことが求められている。

[日経産業新聞 2018年6月21日付]

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