リニアに横たわる「大井川問題」 静岡県との交渉焦点

2018/6/20 19:36
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2027年の開業を目指すリニア中央新幹線の建設で、難所の一つとされてきた「南アルプストンネル静岡工区」が着工に向け前進した。静岡市とJR東海が20日、同工区の建設に必要な道路整備などで合意文書を締結した。もっとも、大井川の水資源への影響をめぐるJR東海と静岡県との調整は道半ばで、交渉の行方が焦点になる。

記者会見したJR東海の金子慎社長(右)と静岡市の田辺信宏市長(20日、静岡市役所)

記者会見したJR東海の金子慎社長(右)と静岡市の田辺信宏市長(20日、静岡市役所)

田辺信宏・静岡市長と金子慎・JR東海社長は20日午前、静岡市内で記者会見した。金子社長が「早期の着工が必要で、協力に感謝する」と述べると、田辺市長は「27年開業に向けたぎりぎりのタイミングで折り合いをつけた」と応じた。

基本合意はトンネル工事現場までの道路の整備で、JR東海が市の要望を全面的に受け入れる内容となる。市が求めていたルートを容認したほか、トンネル新設の費用140億円も全額負担する。市は林道の使用許可など、行政手続きで全面協力する。

JR東海が進めるリニア建設工事のうち、南アルプストンネルは、品川駅や名古屋駅の工事と並ぶ最難所のひとつ。全長25キロメートルの同トンネルの工事を山梨(7.7キロメートル)と静岡(8.9キロメートル)、長野(8.4キロメートル)の3つに分割。静岡以外の2工区は着工済みで、山梨工区では本線トンネルの掘削にも着手している。

JR東海は昨年11月、大成建設を中心とする共同企業体(JV)と静岡工区の工事契約を締結するなど、着工に向けて準備を進めてきた。ただJR東海と県、市などの調整が難航し、リニアの難所工事では唯一、着工できていない。金子社長が記者会見などで「(工期の時間的な)余裕はなくなってきている」と繰り返す状態が続いていた。

特にJR東海と県で隔たりがあるのは、南アルプストンネル工事で大井川の流量が減る問題だ。JR東海は対策案として、工事で発生したわき水を大井川に戻す導水路トンネルの設置などを提示。昨年10月には県の仲介で地元の利水団体と合意寸前までこぎ着けたが、川勝平太知事はJR東海の対策を批判しており、今も交渉は平行線が続いている。

「合意内容はこれから確認するが、水問題と絡めて考えることではない」――。市とJR東海の合意を受けて、川勝知事は20日、静岡市内で記者団にこう述べた。その上で「県としては県民の弱い立場に立っていきたい」と改めて強調した。

JR東海は今月に入り、トンネルのわき水を全量流す能力があるポンプを設置するほか、工事に原因がなくても渇水期に地元の要請に応じて大井川にわき水を流すなどの案を県側に提示した。県側の求める対策案に近づく内容で、地元の利水団体などにも理解を求めていく方針だ。

(横田祐介、福島悠太)

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