世界の難民、過去最高の6850万人
中東情勢悪化など背景に
【ニューヨーク=高橋里奈】世界の難民危機が収束の兆しを見せない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の19日の発表によると、2017年末時点で紛争などで避難している難民は5年連続で増え、過去最高の6850万人に上った。中東やアフリカを中心に事態は深刻化するが、難民受け入れを拒否する国も少なくない。
UNHCRの年次報告書「グローバルトレンズ」によると、17年に新たに国内外で避難を余儀なくされた人々は1620万人に上った。コンゴ民主共和国や南スーダンの紛争、ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャの迫害などが背景にある。
祖国を追われた難民は2540万人と16年より290万人増えた。このうち18歳未満の子供は52%を占める。圧倒的に多いのはシリア難民で、630万人に達した。
年次報告によると難民の受け入れ数の上位10カ国の大半は中東やアフリカ諸国で、欧米でランク入りしたのは6位のドイツのみ。シリアやアフリカから欧州に難民が流出しているイメージとは裏腹に、近隣国に逃れた後にとどまるケースが多いことが浮き彫りとなった。
他国への亡命申請者は約170万人だった。最大の申請先は米国。経済の混乱が際立つベネズエラや治安が悪化するエルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラなど中南米からの申請者が急増した。2位はドイツ、3位はイタリアと欧州諸国がならんだ。
ただ、世界的に難民への逆風は強まっている。欧州の一部の国では難民や移民の受け入れに反対する政党が支持を伸ばしている。イタリアの新政権は今月、地中海で救助された難民の受け入れを拒否した。
国内で避難を余儀なくされているケースも多い。コロンビアやシリア、コンゴ民主共和国、イラク、ソマリア、イエメンなどを中心に約4千万人が国内で住む家を追われている。紛争や武装勢力による暴力で、紛争当事国内で路頭に迷う人々も後を絶たない。
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