2018年9月22日(土)

ロシア、W杯が隠す真の姿

The Economist
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2018/6/20 13:06
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The Economist

 ロシアのプーチン大統領は公の場でめったに英語を話さないが、2010年に例外が一度あった。サッカーの18年ワールドカップ(W杯)の開催誘致に成功した時、国際サッカー連盟(FIFA)の大会組織委員会に対し、「From bottom of my heart, thank you(心より感謝します)」と謝辞を述べたのだ。プーチン氏にとって今回のW杯開催は、14年のソチ冬季五輪同様、自らの指導力によってロシアが復活したことを示す好機となる。同国のムトコ副首相はスポーツ相だった当時、「あらゆる意味で開かれ、もてなしの心にあふれた、新たなロシアを世界に見せたい」と語っていた。

 しかし、それ以降の国際社会におけるロシアの振る舞いは全く友好的とはいえない。14年のクリミア半島併合やウクライナ東部での戦争開始、シリアへの軍事介入は、西側諸国との関係に暗い影を落としてきた。ムトコ氏自身、ソチ五輪のドーピング問題では渦中の人物となった(もっともプーチン氏からは副首相に昇格させてもらうという報いを得た)。

■マレーシア航空機撃墜事件の調査結果出る

オープニング前夜にW杯のロシアでの開催をFIFA会長と喜ぶプーチン大統領(右)=AP

オープニング前夜にW杯のロシアでの開催をFIFA会長と喜ぶプーチン大統領(右)=AP

 今年になってからは、元ロシア情報機関員セルゲイ・スクリパリ氏が英国のソールズベリーで神経剤を使って襲撃されたことを受け、英政府は閣僚と王室メンバーによるW杯参加はボイコットすると決めた。14年7月にウクライナ東部上空でマレーシア航空機(MH)17便が撃墜された事件では、オランダを中心とした5カ国からなる合同捜査チームが5月24日に調査結果を発表し、撃墜にロシアが関わったと指摘した。(編集注、合同捜査チームはこの日、「ロシア部隊所有の地対空ミサイルで同機は撃墜された」としたが、プーチン氏は翌25日、MH17便撃墜に使われたミサイルは「もちろんロシアのものではない」としたうえで、「何が起きたかについては複数説が存在する」と発言した)。犠牲者の遺族はW杯前に発表した文書で「もろ手を挙げて世界を歓迎すると言うロシアの指導者たちが、私たちの世界を粉々に破壊した一番の張本人であるという暗い皮肉を痛切にかみしめている」と述べた。

 これだけの犠牲者を巻き添えにしたロシアだが、それでも世界はロシアの政治状況については見て見ぬふりをして、このほど開幕したW杯のゲームに関心を寄せつつある。ロシアのサッカー代表チームは、今回W杯に参加するチームの中では世界ランキングが最下位で、1次リーグを突破できれば御の字とされている。だが、プーチン氏の海外にロシアを売り込むという狙いは勝ち星を挙げる公算が大きい。

 1980年のモスクワ夏季五輪では、ソ連(当時)のアフガニスタン侵攻に反発した米国の呼び掛けで65カ国がボイコットした。だが、今回は全く異なる展開となりそうだ。このW杯で、英国とともに政府代表を送ることを拒否したのはアイスランドだけだ。査証(ビザ)の申請手続きを簡素化したことで、W杯が閉幕するまでの1カ月の間に100万人余りの外国人がロシアを訪れるとみられる。観戦チケットの売り上げが最も多かったのは米国だ。

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