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上質な缶ワイン人気じわり 家飲みに出張に重宝

エンジョイ・ワイン(1)

NIKKEI STYLE

ワイン人気が定着し、気軽にワインを楽しむ消費者が増えてきた。ここではスーパーマーケットやコンビニエンスストアなど、通常の小売店でも手に入る手軽でお得なワインを、シニアワインエキスパートの資格を持つ私が紹介する。

ビールと同じように気軽に飲まれるようになったワインだが、ビールと比べて不便な点が1つある。容器がガラス瓶(ボトル)であることだ。ボトルは重い、大きい、割れる、飲み切れない。専用の栓抜き(ワインオープナー)が必要な場合もある。そんな不安や不満を抱くカジュアルなワイン愛好家にひそかに人気なのが、缶入りワインだ。缶ワインの中でも特に人気の高い「Barokes(バロークス)」を紹介しよう。

バロークスは高級ワインの産地として知られる、オーストラリアのビクトリア州に本社を構えるバロークス社が製造。現地で栽培したブドウから醸造し、製品にして輸出している。日本での発売は2005年。人気が出始めたのはここ数年のようだ。

日本は、ワインブームとも言われるが、データだけ見れば、昨年や今年の国内消費量は頭打ち。そうした中、17年度のバロークスの国内出荷量は約7万ケース(1ケース=24本)となり、前年度比7%増。16年度も同7%増で、2年続けて大きく伸びている。

日本で販売されているバロークスは全部で7種類。そのうち5種類はスパークリングワインだ。大きさはいずれも1缶250ミリリットルで、通常のボトルのちょうど3分の1。ワイングラスなら、2~3杯分といったところだ。

5種類あるスパークリングワインは辛口が白2種類、ロゼ1種類、赤1種類。そしてやや甘口の白が1種類。スパークリング以外では、辛口の白、赤それぞれ1種類となっている。値段は1本400円台が相場。

味わいは基本的にどれもフレッシュでフルーティー。ワインにとって重要な酸味と果実味のバランスもよく、やや甘口の白を除けばアルコール度数が13%と高いため、ボディーがしっかりとして飲みごたえもある。アペリティフ(食前酒)として最適なほか、カジュアルな料理なら、サラダ、パスタ、魚料理、肉料理など何にでも合いそうだ。

持ち運びや抜栓が簡単なので、屋外でのバーベキューやピクニックでも重宝する。素材のアルミは熱伝導率が高いため、氷水に漬ければ冷えるのは早い。どちらかと言えば、暑くなるこれからの季節にぴったりのワインだ。

では、どんな人たちがよく買うのか。

バロークスを取り扱っている高級スーパー「紀ノ国屋」の商品部課長、菊池才希さんは、「メインの購買層は30代から40代の女性。会社の帰りにちょっとしたおつまみと一緒に購入し、自宅で飲まれる方が多いようです」と話す。

紀ノ国屋で販売している5種類のバロークスはすべてスパークリングワイン。やはり、本格的な食事と合わせて味わうというよりは、軽い食事と一緒に1日の疲れを癒やしたり、喉を潤したりするために軽く1杯という飲み方が多いようだ。

ちなみに、国内でバロークスが最も売れている店は、乗り換え客の多い東京メトロ表参道駅の構内にある「オモ 紀ノ国屋 エチカ表参道店」。夕方の時間帯を中心に1日あたり平均40~50本売れるという。通勤客の多い平日に限れば1日60~70本ぐらい売れている計算になる。

JR東京駅構内の紀ノ国屋では、帰宅途中の購入に加え、これから新幹線などに乗って出張に出かける、あるいは出張帰りの人が買い求めるケースも目立つという。

なぜ売れているのか。ソムリエの資格も持つ菊池さんは、「瓶と違って軽いし、飲み切りサイズなのに加え、この手の商品の中では一番おいしい」と説明する。30代から40代の会社勤めの女性なら、仕事やプライベートで日ごろからおいしいワインを飲む機会も多いはず。舌の肥えた彼女たちが選ぶのだから、やはりおいしいのだろう。

バロークスジャパンのコマーシャル・マネジャー伊藤啓介さんによると、紀ノ国屋のほか、成城石井やローソンイオン、イトーヨーカ堂などで買うことができる。

中には、インターネットで定期的にまとめ買いするヘビー・ユーザーもいる。

ある雑誌の女性編集者(50代)は、アマゾンで毎月、1ケースまとめ買いしているという。いつも買うのは、黄金色の缶に入った白の辛口スパークリングワイン。他の4種類のスパークリングワインに比べて値段は1割ほど高めだが、高級品種シャルドネを100%使って造るだけあって、味わいに高級感がある。

彼女は、「家で家族と食事をする時は、料理をしながらバロークスを1缶空け、そのあと家族と一緒に白か赤のボトルを開ける」のが普段の飲み方と話す。

こんな活用法も披露する。

「友人を招いた時に、差し入れのシャンパンが冷えていない時は冷蔵庫で冷やす必要がある。つなぎとして冷やしておいたバロークスを開ける。大きめのグラスについで出せば、グラスの中で香りが広がり、一段とおいしさが増す」。

バロークスのおいしさの理由は専業ならではのこだわりだ。缶ワインのメーカーはいくつかあるが、大手メーカーが商品のラインアップを広げるために手掛けているケースがほとんどだ。

これに対し、缶ワインしか製造していないバロークス社は、「それが売れなければ死活問題」(伊藤さん)。だからこそ、アルミのにおいがワインに移らないよう、缶の内側のコーティング技術で特許をとるなどコストを掛ける。さらに、毎年、地元の農家からできるだけ高品質のブドウを買い付けて醸造している。そうした手間の積み重ねが、消費者からの高い評価につながっているというわけだ。

醸造も、ほぼ密閉状態となる缶内での保存に適した方法を編み出したという。ワインは極端に酸素が少ない状態だと、抜栓した時に硫黄のような不快なにおいがすることがある。これを還元臭と呼ぶが、バロークスでは缶ワインを開けた時にこうしたにおいがしないよう、醸造時に果汁を少しだけ酸素に触れさせる。こうした試行錯誤を繰り返し、「品質を向上させてきた」(伊藤さん)。

バロークスが人気なのは、「以前に比べて消費者が保守的でなくなったことも大きい」と伊藤さんは指摘する。ワインと言うと、どうしてもスラッとしたシルエットのボトルに入ったイメージが強い。しかし、ワイン市場の拡大に伴う消費者ニーズの多様化や、製造技術の進歩などで、最近は容器に対するイメージも徐々に変わりつつある。

例えば、ビールも少し前までは瓶が主流だった。缶ビールが売れ始めてからもしばらくは、「やっぱりビールは瓶がうまい」と年配者が得意げに話すのを耳にしたことのある人も多いだろう。しかし今やビールと言えば缶が主流だ。

ワインがビールの後を追ったとしても不思議ではない。すでに栓の素材は、従来のコルクの代わりに、ワインオープナーの要らないアルミ製のスクリューキャップを採用する生産者がどんどん増えている。スクリューキャップも初めは市場の拒否反応が強かったが、今や低価格のデイリーワインではスクリューキャップが標準になりつつある。

「熟成するとさらにおいしさを増す高級ワインは、熟成に適した瓶で保存したもののほうが確かにおいしい。だが、気軽に飲むワインに関しては、缶ワインが瓶ワインに味わい面で劣る理由はどこにもない」と伊藤さんは強調する。

(ライター 猪瀬聖)

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