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王者ドイツの「総合力」が映す不安

至言直言 清水秀彦

強豪がやられる典型的なパターンだった。ドイツは前回王者のおごりがあったわけではないだろうが、終盤の焦りぶりを見ても、どこか甘く見ていた部分があったのではないか。

SBを高く上げるのは一つの手段だ。だが、ドイツは右SBのキミヒが前に出すぎるあまり、MFミュラーが使うスペースを潰し、逆にメキシコに右サイドの裏を突かれて何度もカウンターを仕掛けられた。ボランチが右サイドの穴をカバーできればよかったが、クロースもケディラも守備が強くなく足も速くない。相手CF・エルナンデスへと縦パスをどんどん入れられていた。

個々の選手は悪くない。誰もミスをしていないし、真面目に、機械のようにパスを繰り返していた。後半もレーウ監督が戦術を変えなかったのは、それだけ自信があったからだろう。メキシコが守備的にラインを下げるほど、前線のウェルナーやミュラーはスペースがなくなった。最後は自ら選手交代でバランスを崩していた。

清水秀彦氏

これしかない、というやり方が見事にはまったメキシコはチームづくりがうまくいっている印象だ。ドイツ相手に筋書き通りにやってのけたのがしたたかで、非常に勇気がある。ロサノら若い選手がもっと点を取るようになれば面白い。

スイスと引き分けたブラジルは初戦らしい、無理をしない戦いぶりだった。切り替えの速さはまだ鈍く、ダイレクトパスも少なかったが、王国特有のボールを回しながらスピードを上げるプレーは何度かあった。

FWガブリエルジェズスら若手が奮闘した一方で、ネイマール依存からまだ抜け切っていないようにも見えた。ケガ明けのネイマールがフル出場したのも試合を通して調子を戻してもらうためだろう。だがエースがドリブルを仕掛けると、相手は足を引っかけカウンター狙い。抑えられると、攻撃のリズムは明らかに落ちていた。替えが利かない選手なので彼の調子が上がらないときついが、若い選手がもっと爆発するイメージも欲しい。

スイスは守備を前提にしたチームづくりで、持ち味がよく出ていた。ただ、相手が守備的になったときにどう組み立てるか。今のままでは攻撃はシャキリに頼りっきりなため、連戦で疲弊してしまうのではないか。

優勝候補2カ国の初戦で、より不安を感じたのはドイツの方。総合力で勝負してきた前回王者には、ブラジルのように個の力で窮地を打開できる絶対的ストライカーはいない。エジルの調子はいまひとつだし、クロースとケディラの両ボランチがより攻撃寄りでカバーリングなどに難があるのも気になる。2戦目以降、どれだけ切り替えて修正するか注目したい。

(元仙台監督)

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