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王者ドイツに忍び寄る1次L敗退のジンクス

サッカージャーナリスト 大住良之

前回大会優勝の欧州チームは1次リーグで敗退する――。その不吉なジンクスは今回も生きているのだろうか。

準決勝でブラジルを7-1で下すなど、サッカーの2014年ワールドカップ・ブラジル大会で圧倒的な強さをみせ、4回目の優勝を飾ったドイツ。しかしメキシコを相手にした今大会の初戦は0-1の敗戦。02年大会から続くジンクスがまたも繰り返されてしまうのかと、心配する声が上がっている。

02年大会のフランス(1998年大会優勝)、10年大会のイタリア(06年大会優勝)、14年大会のスペイン(10年大会優勝)と、このところ3回連続して前回大会優勝の欧州チームが初戦で勝てないことが続いている(06年大会のブラジルは3戦全勝で1次リーグを突破し、準々決勝でフランスに敗戦)。そして縁起が悪いことに、この3チームはそろって1次リーグで姿を消しているのだ。

ドイツは圧倒的に試合を支配し、メキシコのゴールに25本ものシュートの雨を降らせた。しかしその多くはペナルティーエリア外からのもので、一回もゴールを破れず、逆に12本(後半は3本だけ)のシュートだったメキシコに痛恨の1点を許した。

攻撃に欠けたダイナミックさ

GKノイヤー、DFボアテング、フンメルス、MFケディラ、クロース、エジル、ミュラーら前回優勝のメンバーが残っているドイツ。しかしその攻撃には前回のようなダイナミックさはなく、ボールを支配しているものの、最後のところでメキシコの守備の網を突破しきれない時間が長かった。

「速く攻めきる」というオソリオ監督のプランをメキシコの選手たちが実行した=三村幸作撮影

もちろん、試合だから相手の出来不出来も大きく関係する。この試合のメキシコは攻守に見事なプレーをみせた。「速く攻めきる」というオソリオ監督のプランを選手たちが実行し、カウンターで繰り返しチャンスをつくったのだ。

決勝ゴールもカウンターだった。ドリブルで攻め込もうとしたドイツのケディラにメキシコMFエレラが激しくチャレンジ、スライディングしながらケディラの足元のボールに触れた。自陣ペナルティーエリア前でこぼれ球を拾ったメキシコDFアジャラは時間をかけずに最前線のFWエルナンデスの足元に強いボールを入れる。エルナンデスがサポートするMFグアルダドにワンタッチで落としてターンすると、くらいついたドイツのフンメルスは完全に置き去りにされ、さらに悪いことに滑って倒れた。

グアルダドからタイミングよくリターンを受けたエルナンデスが前進、カバーにきたドイツのボアテングを引きつけて左のスペースにパス。走り込んできたメキシコMFロサノが受け、マークに戻ってきたドイツのエジルをかわしてゴールにけり込んだ。

フンメルスが簡単に外されてDFがボアテング一人になってしまったこと、ロサノに対応できたのがDFでなくエジルであったことから、このとき、ドイツの守備が完全に破綻していたことがわかる。

ロサノ(右から2人目)に先制点を許した場面、ドイツの守備は完全に破綻していた=ロイター

ドイツは右サイドから活発に攻め、特に右サイドバックのキミヒがほとんど攻撃的MFのようなポジションを取って攻め続けていた。「速い攻撃」を準備してきたメキシコには当然、このキミヒが上がった穴をつくというプランもあったに違いない。

こうした相手に対して圧倒的にボールを支配し、シュートの数も多かったにもかかわらず、ドイツの攻撃が迫力に乏しかったという印象はぬぐえない。

スウェーデンや韓国の作戦も…

「世界チャンピオン」というのは、そういうものなのかもしれない。相手はドイツに勝てば大きなものを得られる。だから当然、時間をかけて分析し、プランを練り、ともかくしっかりと守って効果的にカウンターを繰り出す作戦でくる。それは、次に対戦するスウェーデンも、第3戦の韓国も同じだろう。

逆にドイツが守勢に回る試合であれば、ミュラーやドラクスラーといったサイドアタッカーに活躍のチャンスがあるかもしれない。しかし少なくとも、1次リーグではそうした状況にはならないだろう。

ドイツのレーウ監督は次戦までにどうチームを立て直すのか=ロイター

このメキシコ戦を見る限り、相手がペナルティーエリアを固める形になったとき、今大会のドイツにはそれを崩す力が乏しいように感じられた。コンビネーションもそれほど細かくなく、圧倒的な個の強さを持ったアタッカーがいるわけでもないからだ。

「しっかり分析して、次の試合までに改善したい」。試合後、ドイツのレーウ監督は冷静な表情を崩さずにそう語った。しかしスウェーデンにもメキシコのようなサッカーをされたら、非常に厳しい状況に追い込まれる恐れがある。

「世界チャンピオン」がいきなり苦境に立たされた。

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