eスポーツ、米訓練施設でみた「本気」

2018/6/16 6:30
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【ロサンゼルス=佐藤浩実】スポーツのようにゲーム対戦を競う「eスポーツ」。12日から開催中の世界最大級のゲーム展示会「E3」でも特設エリアが設けられるなど、米国ではゲームの楽しみ方の1つとして定着しつつある。有力eスポーツチーム「チームリキッド」が今春に稼働させたトレーニング施設を訪ねた。

今年3月に完成したeスポーツチーム「チームリキッド」の訓練施設。米デルテクノロジーがゲーム用PCなどを提供した。

今年3月に完成したeスポーツチーム「チームリキッド」の訓練施設。米デルテクノロジーがゲーム用PCなどを提供した。

E3の会場があるロサンゼルスの中心部から西へ車で45分。サンタモニカ市にある倉庫街の一角に「Team Liquid(チームリキッド)」の文字と馬の形をしたチームのエンブレムが描かれていた。同チームはオンラインゲーム「リーグオブレジェンド(略称はLoL)」などの大会で好成績を収める世界的にも有名なチームの1つだ。デルテクノロジーのゲーム用パソコン部門「エイリアンウエア」や、ゲーム配信のツイッチなどがスポンサーに名を連ねている。

高性能パソコンやモニターは普通に買うと計40万円ほど。椅子も4万円程度のブランドの特注品

高性能パソコンやモニターは普通に買うと計40万円ほど。椅子も4万円程度のブランドの特注品

今年3月、チームリキッドはデルと組んで、映画制作会社が使っていた倉庫を選手のトレーニング施設へと大改装した。740平方メートルの施設は高い天井から太陽光が差し込み、高さを変えられる机やくつろぐためのソファが並ぶ。訪ねる前は日本の「合宿所」のような施設を想像していたが、今どきのスタートアップ企業のオフィスに近い。

チームリキッドとの窓口を務めるデルの北米eスポーツ担当、デビッド・チェン氏は「チーム運営に最高の環境を作った」と胸を張る。同施設を使う選手やコーチは約20人。eスポーツの大会は週末に開かれるため月曜は大抵休み。火曜から金曜にかけて、この施設で次の試合への作戦を練ったり練習したりする。

専属のシェフが栄養を考慮して選手たちの食事を作る

専属のシェフが栄養を考慮して選手たちの食事を作る

「LoL」の選手の場合、午前9時ごろに施設に到着し朝食をとる。その後は120インチの巨大プロジェクターを使える部屋でコーチらと戦術などの打ち合わせ。それからチームメート5人が1列に机を並べた部屋へ移動し、11~14時ごろまで練習する。昼食の後は休憩を挟みながら20時まで練習を続け、夕食をとってから帰宅するのが1日の流れだ。

選手の前にはデルが寄贈した最新のゲーム用パソコンとモニターが並んでいた。長時間ゲームをしても疲れないように設計してある「マックスノミック」ブランドの椅子も特注品だ。

「かなり気を使っている」(チェン氏)のが食事だ。専属シェフのマニー・リシアガさんが栄養やカロリー量を考慮してメキシコ料理やパスタなど3食を作る。ゲームというと軽食を取りながら遊ぶイメージもあるが、この施設では練習中の食事は禁止だ。「食べ過ぎて眠くなったり、集中力が下がったりしないようにしている」(チェン氏)

選手のための設備以上に充実しているのは、チームを支える25~30人のスタッフのための設備だ。デルがこの施設に寄贈したパソコンは50台以上、モニターは150台以上にのぼるが、スタッフ向けの機材も多い。

スタジオを備え、選手のポスターなどを素早く作成する

スタジオを備え、選手のポスターなどを素早く作成する

たとえば、選手の格好よい写真や映像を撮るためのスタジオ。施設にはカメラマンが常駐しており、試合の日程などが決まればすぐにポスターを作ることができる。写真や映像編集のための作業場もあるので、その場で制作を進められる。週末の試合が終わってすぐにダイジェスト版の動画を作りソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で発信することも可能だ。

eスポーツのチームがプロである選手のプレーの質を高めるのは当たり前。チームとしてのブランドを高めるための仕組みの充実ぶりに、eスポーツという言葉が盛り上がり始めたばかりの日本との違いを感じた。

■プレーの動画鑑賞、日常の一部に
 【ロサンゼルス=桜井芳野】「E3」の会場にもeスポーツのステージが設けられていた。米国ではゲームでの対戦の様子を公開したり観戦したりするなどは日常のいち風景だ。
 対戦ゲーム「アリーナ オブ ヴァラー」のステージを観戦していた米イリノイ州在住のジョン・ジェファーソンさん(36)は「特に『eスポーツ』という言葉は使ったことはないが、ゲームに疲れたときに大会やプレー動画はよく見る。チームの戦略など見ていて面白いところがたくさんある」と語る。
 普及の背景には、動画配信サイト「ユーチューブ」やゲーム動画専門サイト「ツイッチ」などでゲームのプレー動画を見る文化が定着したことが挙げられる。大会だけでなく、ネットでの視聴者が増えることでスポンサーなどがつき、広告料や大会の配信料などのビジネスが成り立つ。E3のeスポーツステージも米通信大手AT&Tがスポンサーをしていた。
 オランダの調査会社ニューズーによると、興行収入と広告、配信収入などを合計したeスポーツの2018年の市場規模は前年比38%増の9億560万ドル(約990億円)で、21年には16億5千万ドル(約1800億円)に達する見通しだ。一方で、プロゲーマーの制度を整えたことでにわかにeスポーツへの関心が高まった日本の市場規模(Gzブレイン調べ)は5億円に満たない。
 カプコンの辻本春弘社長は「eスポーツには15~20年程度の長期的な視点で取り組んでいくべきだ」と話す。一時のブームにとどまらず、文化として定着させる意識が必要だ。
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