2018年6月19日(火)

大阪万博誘致の日本プレゼン、識者2人が採点
万博2025

地域総合
関西
社会
2018/6/14 23:00
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 2025年国際博覧会(万博)の大阪誘致に向け、日本がパリの博覧会国際事務局(BIE)総会で13日に行ったプレゼンテーション。山中伸弥・京都大iPS細胞研究所長らを起用し投票を呼びかけた。開催国決定は11月。3カ国が立候補し、最後となった日本のプレゼンの評価と今後の課題を識者2人に聞いた。

■コンサル会社社長、島田久仁彦氏「健康・医療関心引く 金額提示は疑問」

島田久仁彦(しまだ・くにひこ)氏
1975年生まれ、大阪府出身。国際交渉のコンサルティング会社「KSインターナショナルストラテジーズ」社長。98年から国連紛争調停官を務めた後、環境省で国際調整官など歴任した。

島田久仁彦(しまだ・くにひこ)氏
1975年生まれ、大阪府出身。国際交渉のコンサルティング会社「KSインターナショナルストラテジーズ」社長。98年から国連紛争調停官を務めた後、環境省で国際調整官など歴任した。

 日本は若者代表として京都大の医学生がまず登壇し、山中所長につなぐ形で、科学や医療、人々の交流の大切さを説いた。人選がバラエティーに富み、健康社会や先端医療という堅いテーマにうまく関心を引きつけた。

 世耕弘成経済産業相は万博に参加する途上国100カ国に計約240億円の支援を打ち出した。具体的な金額に触れたことが良かったのかは疑問。その金額が最低基準となり追加負担も求められかねない。共同研究開発などを途上国支援として提示した方が有効だったのではないか。

 各国政府や企業との国際交渉を担うコンサルティング会社を経営する立場から助言すれば、各国は今後、日本の万博にかける温度感を見定めるだろう。大阪で再び開く目的やテーマを一言で言い表せるようなキャッチフレーズを作り、海外での誘致活動で繰り返し披露するのも一手だろう。

 一方、ロシアが掲げたスマートシティー(環境配慮型都市)構想は会場予定地のエカテリンブルクの開発の話で内向きだった。ただ、投票を呼びかける国際交渉ではロシアの巧者ぶりは注意すべきだ。

 アゼルバイジャンは、終了後の具体的なレガシー(遺産)が見えない。東西の歴史的な交差点というアピールは上手で、文化的な融和に一点集中する戦略が奏功する可能性はある。

■関西大教授、岡田朋之氏「支援具体化を評価 多言語発信に課題」

岡田朋之(おかだ・ともゆき)氏
1965年生まれ、大阪府出身。2007年より関西大総合情報学部教授。専門はメディア論や文化社会学。共同著書に「私の愛した地球博―愛知万博2204万人の物語」など。

岡田朋之(おかだ・ともゆき)氏
1965年生まれ、大阪府出身。2007年より関西大総合情報学部教授。専門はメディア論や文化社会学。共同著書に「私の愛した地球博―愛知万博2204万人の物語」など。

 BIE視察団が3月に課題として挙げた発展途上国への支援が具体化されたことは評価する。今後は途上国が展示施設を出す場合の設置計画など詳細を詰める必要がある。過去の万博では開催国が費用負担は約束したが、開幕に建設が間に合わなかったケースもある。

 山中所長や京都大の医学生らがスピーチしたことで、命や生命科学といった万博テーマに即した説得力のある内容になった。一方、留学生や若手の外国人研究者を起用したほうが、先端技術の世界的な拠点としての関西をよりアピールできたのではないか。

 情報発信力や最新技術の活用が今度の課題。万博誘致委員会の公式ウェブサイトは日英仏語で見られるが、万博構想の具体的な説明が日本語版に比べ少ない。多言語対応を充実させるべきだ。立体的に会場図を見せたり、会場と大阪の街を行き来したりするような映像をSNS(交流サイト)で提供するなど、他国にない発信も求められる。

 ロシアのスマートシティー(環境配慮型都市)構想は、会場予定地のエカテリンブルク全体を巻き込んだ発想で魅力的だ。日本は大阪市内の人工島、夢洲をどうするかということが中心で、ロシアのような打ち出し方はできていない。アゼルバイジャンは首相が登場し、フランス語でスピーチした。トップが直接語りかけることは重要だ。

■官民一丸で要人説得へ 3カ国、横一線

 【パリ=中川竹美】25年万博の開催国は11月23日のBIE総会で、加盟170カ国の投票によって決まる。総会までに公式のプレゼンテーションの機会はなく、日本は今後、政府や大阪府・市、経済界が一丸となって加盟国への働きかけを強める。

 日本は13日のプレゼンで発展途上国など約100カ国に約240億円を支援すると表明しており、大票田のアフリカや投票先が同じ国になる傾向がある中南米諸国への個別訪問で具体的なメリットを訴える方針。誘致委員会に加わる関西経済連合会がBIE本部のあるパリに送り込んだ複数の駐在員や、誘致委が「エグゼクティブアドバイザー」として任命した大手商社の海外駐在員約60人も、培ったビジネスの人脈などを生かして各国要人の説得に当たる。

 関係者によると、BIEが加盟国に配布した立候補国の視察報告書は「いずれの国もBIEの求める基準には達しているとの結論だった」という。開催能力は横一線と判断された形で、府万博誘致推進室は「票読みは極めて難しい」と話す。約半世紀ぶりの「大阪万博」をたぐり寄せられるか。誘致レースが佳境を迎えるなか、ロシア、アゼルバイジャンとの激しい票の奪い合いが続く。

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