有名ブランド製スーツの裏地 支える日本の再生素材
旭化成の再生セルロース繊維「ベンベルグ」


イタリア・フィレンツェで開催中の世界最大級のメンズファッション見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」の会場内の一角に、日本の技術力をアピールするブースがある。キートンやエルメネジルド・ゼニアといった有名ファッションブランドに、コットンから生まれた再生セルロース繊維(素材名キュプラ)を世界で唯一供給する旭化成のものだ。

同社が「ベンベルグ」のブランドで展開するキュプラは「コットンリンター」と呼ばれるコットンの種子表面のうぶ毛が原料。本来、繊維素材として使われていなかったが、独自技術で精製・溶解して再生させた。
天然素材を原料としながらも、天然繊維のような太さのムラがなく、極めて細く、断面が丸い。この結果、触れるとすべすべと滑らかで、吸湿・放湿性が高く、染色しやすいという特徴を備える。
このため、スーツの裏地に使われることが多く、ゼニアやカナーリといった欧米のブランドのほか、日本の麻布テーラーなどがベンベルグを採用しているという。
旭化成はインドや米国などからコットンリンターを調達して、宮崎県延岡市にある工場に集めて全量を生産している。

環境意識の高まりを背景に、「未利用繊維を活用した点や、工場が環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001シリーズを取得し、トレーサビリティー(生産履歴の追跡)などに優れていることが、欧州のファッションブランドから高く評価されている」(旭化成繊維イタリアの池内航平セールスマネージャー)という。
(フィレンツェ=堀威彦)
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