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「FRBを疑え」パウエル氏試練

2018/6/14 9:11
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今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で市場が最も注目した点は今年の利上げ回数が3回か4回か、ということであった。

答えは4回。これに反応して円相場も瞬間的に1ドル=110円80銭台まで円安・ドル高に振れた。しかし、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の記者会見が始まると110円40~50銭の水準まで戻した。FRBは決して性急な利上げに走るわけではない、ということが語られたからだ。

FOMC参加者の金利見通し分布を示すドットチャートを見ても、今年末の金利予測を1人が2.125%から2.375%に引き上げただけだ。総数で見れば、前回は2.125%予測が6人、2.375%が6人に対し、今回は2.125%が5人、2.375%が7人となっている。3回説と4回説が拮抗している状況に変わりはない。しかも、ドットチャートはあくまで現時点での予測であり、今後の経済データや地政学的・政治的要因で変動する可能性がある。

気になるのは、保護主義に関するパウエルFRB議長の対応だ。記者会見で2回質問されたのに、FRBの管轄外との姿勢で明確な答えを避けた。

パウエル氏のこだわりも理解はできる。トランプ米大統領に任命されたパウエル氏は市場で「トランプ・チャイルド」視されたこともある。それだけに、中央銀行の政治的独立性には神経質にならざるを得まい。

とはいえ、保護主義の世界経済への影響は今や、喫緊の課題である。事態は、米国対同盟国の深刻な亀裂状態にまで発展している。米国大統領の標榜する保護主義が、回り回って米国経済の足を引っ張る結果になることは不可避であろう。それを無視した金融政策運営には、市場として不安を感じざるを得ない。

バーナンキ・イエレン時代にはマーケット内で「FRBには逆らうな」と言われたものだが、今や、「FRBを疑え」とささやかれはじめている。仮に、保護主義の影響を軽視して利上げを継続した場合、締め過ぎ(オーバーキル)のリスクが懸念される。「年内利上げ4回」が示された後に、円相場が気迷い症状を見せたのは、FRBが金融政策運営を誤るリスクを意識したゆえの現象ともいえよう。

2018年後半に入ると、市場の関心は19年の利上げ回数に移りそうだ。今回のドットチャートでは、今年4回利上げしたうえで来年は2回との予測が4人、同3回が4人、同4回が3人となっている。したがって中心値は3回だ。しかし、その実態は、かなり割れている。

さらに、FRB経済見通しでは、来年以降は米国経済成長率が減速していく。18年は2.8%、19年は2.4%、20年は2.0%だ。米国の景気循環サイクルもいよいよ最終段階に入り、市場ではリセッション(景気後退)の前兆とされる長短金利逆転現象の可能性がしきりに話題になる。

来年は、FRBが「どこまで利上げするか」より「利下げの余地がどこまであるか」が注目される可能性がある。来るべき景気後退もリスクシナリオとして意識しつつ、今年は過熱シナリオも視野に利上げを粛々と進める。

有事対応としての非伝統的金融政策の後始末役という損な役割を引き受けたパウエル議長は、未知の海域を航行せねばならない。来年から毎回、FOMC後に記者会見が開かれることになった。FOMC発の乱高下の回数が増えることに、市場は身構えている。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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