2018年8月16日(木)

パウエルFRB議長の記者会見詳細

北米
2018/6/14 7:56
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 13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見したパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言は以下の通り。

 ――インフレと財政政策の見方ついて3月以降何か変化したか。

 「とくに3月以降に大きな変化はない。インフレは2%に向かってゆっくりと上昇しており、FOMCメンバーは引き続き、インフレ目標水準を2%に設定し、それが安定して維持できるまでは勝利宣言はできない。財政政策について、メンバーは企業と個人の減税の効果と消費拡大が今後3年間ほどの間に需要を強く支えるとみている。供給サイドについては法人税減税と投資拡大で生産性が向上し、経済拡大に貢献するとみている。ただ、それがいつ訪れるかのタイミングは不透明だ」

 ――フェデラルファンド(FF)金利が中立水準になったらどうするのか。

 「完全雇用と物価安定を目指して長期間にわたり、緩和的金融政策を実施してきたが、景気が拡大するのに伴い、ゆっくりと金利を引き上げる政策に変わった。今後どれだけ緩和的金融政策を維持するべきか、政策を中立にするタイミングをどうやって把握するかという問いに答えるためには、これから発表される物価指標などの経済指標を精査することだ」

 ――インフレ目標2%は過去2年半にわたり続いてきた。今後は新たな物価目標の設定や新しい目標の設定はありえるのか。

 「個人消費支出(PCE)インフレの目標を2%に設定してきたが、この目標はうまく景気拡大に作用してきたと思う。私を含めFOMCメンバーはこの目標維持に全力を投じてきた。この目標を変えるのは極めて困難といえる。物価が目標を上回ったり、下回ったりすることはありうるわけで、重要なのはこの2%の目標の信頼性を高めることだ。新しい目標の設定については今後我々も議論することはあると思うが、とくに具体的にいつ議論するかという計画はない」

 ――カナダで実施されたG7では緊張が高まり、対中国貿易については追加的な輸入制限導入や各国による米国への報復措置の可能性が高まった。こうした貿易摩擦は米経済にどれだけ打撃を与えるか。通商問題について米企業からの反応は。

 「議会がFOMCに課している役割は完全雇用と物価の安定だ。そして他の政府機関とともに金融の安定を維持することだ。通商問題は政策執行機関である大統領に権限があり、私がそれに意見をするのは控えたい。もちろん私を含め、地区連銀総裁は広く米企業経営者と接触している。それは米地区連銀経済報告(ベージュブック)でリポートしているほか、FOMCでも個々人が通商問題の変化で企業経営者が懸念を高めていることに言及している」

 「また、企業が投資や新規雇用を中断しているという報告も出始めている。景気は強く、今のところそうした事実は数字には表れていない。通商問題はあくまで現時点ではリスクというところにとどめたい」

 ――ホワイトハウスが予測するところの3%成長を達成できるとみているのか。

 「景気の潜在的成長率については見方が様々で不透明要素が多い。一方で財政政策では何千という出来事やデータが関係するということはない。我々のアプローチの仕方は税制改革などからどれだけの潜在成長率がもたらされるかの効果を把握することだ。成長率予測の数値については、それぞれのFOMCメンバーの予測が異なり、それを注視していく」

 ――インフレで勝利宣言はまだできないと言ったが、インフレが目標の2%をどの程度、どの期間上回ったら、どう考えるのか。

 「声明文でも言及したようにインフレが目標を上回っても、下回ってもそれが長期にわたる場合、それは懸念すべきことになる。もちろん物価が上がったり下がったりするのは自然だ。例えばこの夏は原油価格の上昇で物価は2%を上回るだろう。しかし、長期にわたって目標を上回るようなことになれば、我々はインフレ引き下げに動く必要がある。しかし、我々が物価を目標水準通りに正確にコントロールできないことも承知している」

 ――今年の利上げは当初予想の3回から4回になったが、FRBは引き締め政策にシフトしているのか。

 「2012年に私がFRBで働き初めて以来、景気は大きく拡大した。現在の経済状況は当時とは非常に異なる。金融危機のピーク時には失業率は10%に達したが、今では3.8%まで下がり、さらに下がり続けている。きょう、FOMCで決定したことはこうした経済の強さを反映したものだ。経済成長と雇用は強く、インフレは目標水準に近づいている。長期にわたって我々は低金利政策で景気を支えてきた。設定した目標に近づいた現在、金融政策を平常時のものに戻すべきであり、それを現在やっているところだ」

 ――賃金についての見方は。物価上昇に伴い、賃金も上昇を始めたのか。

 「賃金は少しずつ上昇してきている。景気拡大局面では賃金は2%程度の上昇となったが、労働市場が強くなるのに伴い、賃金は2~3%程度のペースで上昇してきている。失業率が10%から3.8%に低下する過程では、賃金はもっと速いペースで上昇するかと思った。それがなかったのは生産性の低さによるものとみている。しかし、人手不足の現在、賃金がそれほど上昇しないのには少々当惑している」

 ――失業率は当初予想よりも低く、インフレ予想は高くなった。FRBが政策を変更する前にどの程度までこうした数値を容認できるのか。

 「失業率もインフレ率も予想は3月からほんの少ししか変わっていない。失業率がどの水準なら自然な失業率で長期間維持できる水準なのかは確かではない。しかも米国民の教育水準が上がり、年齢も上がるにつれて失業率も下がっている。しかし、それを正確に把握することはできない。今後の指標を見ながら学ぶ必要がある。そのため、金融政策を変更するための失業率やインフレ率を正確に述べることはできない。我々がゆっくりと利上げをしているのはそうした不透明要因があるからだ」

 「我々はインフレが顕在化するまで待つわけではない。利上げを速くやりすぎてインフレが目標水準まで達しないリスクと、利上げのペースが遅すぎてインフレ率が上昇しすぎになるリスクという2つのリスクに対処している」

 ――民間金融機関がFRBに置いている超過準備預金の付利(IOER)を0.2%引き上げにとどめたのはなぜか。

 「フェデラルファンド(FF)金利を誘導水準内に維持するための技術的な措置にすぎない。IOERの付利の修正はそのツールの一つで、適宜活用していくが、頻繁に利用することはないと思う。正確にその効果が把握できないからだ。米財務省証券(TB)の供給は、レポ金利やマネーマーケット金利の上昇につながるとか、その裁定取引はFF金利をIOERの金利まで引き上げるなどの可能性はある。しかし、それだけの効果とは限らないので、我々も学習する必要がある段階だ。今日のFOMCでのIOER金利を0.2%引き上げにとどめたのは、マイナーな技術的修正だ」

 ――より低い自然失業率と低インフレの経済へのシフトが見られるか。

 「自然失業率は長期間にわたって大幅に低下したと言える。自然失業率は教育水準や人口構成、労働市場などゆっくり動く変数に影響を受ける傾向がある。経済が過熱するなかで循環的に自然失業率が低下した可能性もある。しかし自然失業率に関する研究をみれば自然失業率推定値の幅は大きく、今後の経済データを見て判断していくことになる」

 「インフレ率に関しては、2%の目標はFRBがコントロールするもので、目標達成に取り組まなければならない。インフレ率が2%以下に低下するのを防ぎ、期待インフレが2%に固定されている状況を維持することが重要だ。0%に近くなればFRBによる利下げの余地が低下し、低水準に長くとどまることになる」

 ――20年の失業率見通しの中間値を3.5%に下げたが、長期見通しは4.5%を維持した。どうしたら失業率が4.5%になるのか。

 「我々は自然失業率の水準について学びながら進んでいる状態だ。20年のインフレ率の見通しは目標に近い数値となっていることからわかるように、失業率が低い水準が続いたとしても我々の見通しにおいてインフレ率が予想より速く上昇することは想定していない」

 ――ではなぜ長期的な失業率が20年の予測に近い水準となっていないのか。

 「低くなる可能性もある。しかし、予測には幅があり、観測できない変数に固執すべきではない。データや実体経済で起きていることに基づいて考えるべきだ」

 ――大手金融機関の資本要件を今後1、2年で変える可能性はあるか。

 「金融の脆弱性が通常より高い場合に大手機関の資本要件をあげる措置があるが、現在、金融の安定性において通常より高いリスクがあるとは思えない。家計は負債を返済し、賃金は上昇、職もあり家計に関して懸念していない。銀行の資本も潤沢だ。一部の市場では資産価格の上昇がみられるが、全体的には金融リスクは高くない。ただこの環境が今後変わる可能性はある」

 ――米議会で銀行による大麻(マリフアナ)事業の参入が議論されているがマリフアナが合法な州において銀行が事業に参入すべきか。

 「多くの州法はマリフアナを合法化しているが、連邦法は合法化していないため、監督機関は難しい状況にある。より明確になることを期待するが、マリフアナは我々の任務ではない」

 ――FRB理事になる以前、FRBの監督規制担当の委員長として規制改革を提案してきたが、今後規制改革において新しい動きはみられるか。

 「ドッド・フランク法(金融規制改革法)の一部を見直す法律を受けて、厳しい監督対象となるシステム上重要な機関から外れた金融機関のリスクの管理方法など多くのルールの制定が必要だ。過去10年間、我々は金融システムの強化を進めてきた。資本や流動性の強化、ストレステスト(健全性審査)などは維持したいが、より効果的で効率的なものにしたいと考えている」

 ――利上げの影響を懸念している労働者に対してメッセージはあるか。

 「経済の状態は良い。家計やビジネスの信頼感は高く、労働市場も良好だ。我々は経済の拡大や堅調な労働市場を継続し、インフレ率を2%に維持することを目指して金融政策を実施している。急速な利上げとならないように非常に慎重だ。現状において穏やかな利上げの継続は正しい判断だ」

 ――最近の財政刺激策をうけて中立金利の上昇は見られるか。中立金利の水準にあるかどうかはどう判断するのか。

 「FOMCの名目中立金利の予測レンジは2.25~3.5%で、中間値は2.9%だ。FF金利の約1ポイント差にある2.9%(が中立金利)と考えられるだろう」

 「赤字の増加は金利の上昇圧力となるべきで、財政刺激策は中立金利に上昇圧力を与えるだろう。中立金利に達するかの判断についてはインフレ率や失業率、労働市場など全ての経済指標を見なければならない。注目すべき点は、過去2つの景気循環の終わりは、インフレではなく金融システムの不安定化によってもたらされた。このことに注意する必要がある」

 ――金融政策を約10年にわたり説明してきた「緩和的」という言葉をなくす、もしくは変えることについて話し合ったか。

 「議論した。長い間、経済は緩和的な金融政策を必要としてきた。しかし経済回復を受け、金利はFOMC参加者がほぼ中立と考える領域に比較的早期に入るだろう。その時点で、政策は緩和的とFOMCが考えると述べるのは正確ではない。まだその時点に来ているとは思わないが、確実に近づいているし、市場も理解するだろう。中立金利に近づいているという点が、真のメッセージだ。それは、政策がどこにあるかを明らかにするものであって、声明ではなく、市場を混乱させるものではない。もちろん、慎重に会合で議論するし、コミュニケーションもとる」

――貿易問題がもたらす下振れリスクについてどう考えるか。

 「自分の車線に集中している。貿易は、議会が行政府に明確に権限を付与しており、我々は貿易政策に役割を果たすつもりはない。ただ、我々は企業から情報を得る接点を全米に持っており、そこから得た情報は議事要旨に報告する。貿易の変更が混乱をもたらすとの懸念が聞かれる。しかし、その混乱を示す数字はまだ見られない。経済は様々な面で非常に強い」

 ――長短金利差の縮小をどう考えるか。長期金利の上昇が遅いのをどうに説明するか。

 「長短金利差は、FOMC参加者を含め人々が話題にしており、いろいろな見方がある。議論は要するに、適切な政策とは何か、中立金利に近づくにつれて政策をどうすべきかということだと私は考えている」

 「金利差縮小の理由はFF金利が上がっているからだが、難しい問いは、長期金利に何が起きているかということだ。長期金利を動かすものはたくさんある。しかし、最終的に我々が気にかけるのは、何が適切な政策スタンスであるかということで、中立金利がどこかについて長期金利の中にシグナルがあるかもしれないということだ。それが人々が金利差に注目する理由だと思う」

 ――企業が高い価格で株を購入しており、消費者の負債も増えている。信用バブルが起きていないか。

 「家計に過剰な信用の増加は起きていないし、銀行資本はかなり高まっている。金融以外の企業は歴史的にみれはやや高い信用水準にあるが、債務不履行は低く、金利も低い。金融以外の企業については注視している」

 ――将来の景気後退に備えて利下げの幅を作ることを考えて追加利上げを行った面はないか。

 「そのような考え方はまったくない。利上げを急ぎすぎれば景気後退の可能性を高めるだけで、それはまさに避けたいことだ。低金利に戻ることを心配するなら、リスク管理の観点からみれば、ややゆっくり利上げを行い、我慢することだ。それが超低金利から離れるための持続可能な戦略である可能性が高い。我々は現在、十分に超低金利から離れており、リスクはほぼ均衡していることから、成長を持続し、労働市場の強さを維持し、インフレを2%付近にとどめるために、経済に何か必要かを見ているところだ」

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