イタリア新政権、救助の移民の入国拒否 EUで足並み乱れ - 日本経済新聞
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イタリア新政権、救助の移民の入国拒否 EUで足並み乱れ

【パリ=白石透冴】イタリアの新政権が移民に強硬な姿勢をみせている。地中海で救出された移民の入国を拒否、スペインが急きょ受け入れを表明した。伊政府はさらに対応を批判したフランスを「偽善的」と呼ぶなど、他の欧州連合(EU)加盟国との衝突も辞さない構えだ。移民をめぐる各国の足並みの乱れが表面化し、EUの結束が試される事態に発展している。

今月発足したコンテ伊政権は10日、アフリカから渡航し、民間の救助船「アクエリアス号」が助けた移民629人が伊南部に上陸するのを拒否した。地中海の国マルタも拒んだため、一時船は行き場がなくなった。

同じく今月発足したスペインの中道左派のサンチェス政権は翌11日、「人道的な悲劇を避けるため」として船の受け入れを表明した。

コンテ政権は大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右「同盟」の連立政権だ。特に同盟党首のサルビーニ副首相・内相は移民排斥の主張で知られ、今回の判断を主導したとみられる。

サルビーニ氏はスペインによる受け入れ表明後、ただちにツイッターで「勝利だ! 最初の目的を達成した!」と発信した。ロイター通信によると、サルビーニ氏は13日付の伊紙のインタビューで「我々が考えを変えることはない」と語った。イタリアには過去4年間で60万人以上の移民が流入している。

イタリアの連立与党が排他的な主張をしていることでEUには警戒感が出ていた。今回、実際に移民受け入れを拒否する行動に出たことで、他のEU加盟国に波紋が広がった。

フランスのマクロン大統領は「現実から目を背けた無責任な対応」と批判した。同国のグリボー報道官は12日、閣議後の記者会見で「国際法に照らせば、イタリアは責任を果たしていない」と明言した。

これに対し、コンテ伊首相は「移民問題から目を背けてきた国の、偽善的な発言は受け入れられない」と反発し、非難しあっている。

一方で仏AFP通信によると、大量の移民や難民の受け入れに反対するハンガリーのオルバン首相は伊政府の判断を「全面的に支持する」と擁護した。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、地中海を経由してアフリカや中東から入る移民は2015年に101万人とピークを記録した。その後は減っているが、18年1~6月でも3万超の人が入った。

EUの難民受け入れ手続きを定めた「ダブリン規則」は移民が最初に入ったEU加盟国が手続きを担うとしているため、地中海の玄関口であるギリシャやイタリア、スペインの相対的な負担が重くなっている。治安の悪化などの懸念にもつながり、3月のイタリア総選挙で反移民を掲げる同盟が躍進した背景の一つとなっている。

フランスのコロン内相は12日、イタリア、スペインの内相と近日中に「対話を深めるため」パリでそれぞれ会談を開くことを呼びかけた。今月28~29日のEU首脳会議では、イタリアの対応やEUの移民政策をめぐる議論が熱を帯びそうだ。

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