2018年6月24日(日)
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エースをねらえ! eスポーツで世界制覇
遊びの進化論

未来学
ネット・IT
2018/6/14 2:00
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 「ゲームばかりしていないで宿題をしなさい!」――。子どものころ母に何度しかられたことか。それでもスーパーファミコンを手放せなかった昭和生まれの僕(34)。もしポスト平成の世に生まれていれば、きっと毎日褒められたに違いない。「きょうも3時間もゲームしたの? 頑張ってるわね」――。

eスポーツの授業を受けるクラーク記念国際高校の生徒たち。この中から未来のスターゲーマーが生まれるかもしれない(東京都千代田区のソフマップAKIBA(2)号館)=為廣剛撮影

eスポーツの授業を受けるクラーク記念国際高校の生徒たち。この中から未来のスターゲーマーが生まれるかもしれない(東京都千代田区のソフマップAKIBA(2)号館)=為廣剛撮影

 ゲーマーが近い将来、サッカーのポルトガル代表、クリスティアノ・ロナルド選手のような世界のヒーローになるかもしれない。ゲーム対戦を競技にした「eスポーツ」は教育現場では学ぶ対象となり、高額賞金を稼ぐプロも出始めた。日本でもプロ育成をうたうコースをプレ開講した通信制高校ができたと聞き僕はすぐさま大阪に向かった。

 ゲームセンターのような様子を思い浮かべていたのだが、ルネサンス大阪高校で案内されたのは一見、普通の教室だった。生徒は中学を卒業したばかりの山下葉留さん(15)と辻彬仁さん(16)の2人。講師である近畿大学eスポーツサークル代表の菊地拓海さん(21)が「リーグ・オブ・レジェンド」という対戦型ゲームの登場キャラクターの特徴などを解説していた。

 辻さんは「やりたいことを見つけたかった。ゲームは好き。将来はプロを目指したい」と話す。「eスポーツを通じて、世界で活躍できる人材を輩出したい」と同校の担当者の福田和彦さん。10月からは対戦などで窮地に追い込まれても耐えられる強い精神力を養う授業も設ける。

 主戦場は海外の大会で、英語は必須。その英語も受験英語ではなく、インターネットの世界で多用される表現やゲーム用語、スラングなど生きた英語を米国人講師が教える。英語、コミュニケーション能力、強い精神力。観客を楽しませる要素も求められ、プロは一種のパフォーマーだ。スタートは遊びでも、プロへの道は険しい。

 東京・秋葉原にあるクラーク記念国際高校のITキャンパスでもゲーム・プログラミング専攻の選択科目としてeスポーツを採用した。ソフマップが新設した専用スタジオで計40人がプロチームのマネジャーの実技指導を受ける。

 いずれは「プロの育成コースはもちろん、海外の大学と提携してeスポーツ留学も考えたい」と土屋正義キャンパス長は話す。若者が将来を思い描く新分野として期待を寄せている。全国から生徒たちの問い合わせが相次ぐ。

 小学生が就きたい職業の上位に「ユーチューバー」があがる時代。早晩「プロゲーマー」もランクインする。世界には賞金総額が27億円に達する大会があり、韓国では年収3億円以上という猛者もいる。日本eスポーツ連合の浜村弘一副会長は、業界の社会的地位を高めるため、日本のスター選手を切望している。

 米国ではすでにゲームのプロも生まれ、学校間で有望選手を激しく奪い合う。野球やサッカーの優秀な選手と同じ扱いだ。公立のカリフォルニア大学アーバイン校ではeスポーツで優秀な学生に奨学金制度を設けた。ゲームを大学の売り物として知名度を高めることで科学分野に明るい学生を集める狙いだ。

 プロゲーマーが活躍する世界は、あらゆるモノがネットにつながるIoT全盛期だ。野村総合研究所によれば、18年に1兆円超になる国内のIoT市場は、23年には4兆円を超えるまで急拡大するという。

 読み、書き、ゲーム――。ゲームが、IT(情報技術)時代の義務教育となり、身を立てるスキルとして重視される。プロになる夢は破れても、ゲームの達人は有能な人材として重宝される。

 例えばゲームで鍛えた細やかで正確な指先の動き、画面全体を捉えて戦略を立てるといった目の使い方は、メスをじかに握らず画像を見ながら遠隔手術をする医者の育成につながりそうだ。無医村でも一流の医療をだれもが享受できる世界がぐっと近づく。

 選ぶ事象で結末が異なるシミュレーションゲームなどの延長では、豊かな発想が農産物の品種改良や新薬の創出、斬新な料理の開発など幅広い分野で活躍するエンジニアを生み出すかもしれない。

 ゲームとは勝敗を決めるものという意味があるという。負ける悔しさが刺激になり、挑戦する心や乗り越える力をもたらす。ゲームはヒトを進化させる可能性を秘める。

 世界のeスポーツ市場は韓国や米国を主軸に急成長している。オランダの調査会社ニューズーは、2018年の世界のeスポーツ市場は前年比38%増の9億560万ドル(約990億円)と予測する。高騰する大会の賞金額も話題をさらい、市場を盛り上げる。米エピック・ゲームズはシューティングゲーム「フォートナイトバトルロイヤル」のeスポーツに総額1億ドル(約110億円)の賞金を用意すると発表した。

 世界の盛り上がりに比べると、日本は出遅れている。Gzブレインの調査によると17年の国内のeスポーツ市場の規模は5億円未満と寂しい限りだ。任天堂の「ファミリーコンピュータ」やソニーの「プレイステーション」といった大ヒット機器を生み出してきたゲーム大国日本で、なぜeスポーツの普及が遅れたのか。

 皮肉なことに、据え置き型ゲームの性能がよく、あまりに普及したことが一因だ。海外のeスポーツで主流のパソコンのオンラインゲームに目が向かず、据え置き型ゲーム機でのオンライン機能の追加も遅れた。ただ、いまではネット上で他のプレーヤーと対戦する様子を動画配信サイトなどで見るという楽しみ方も広まっている。

 今後、日本はeスポーツ大国となるか。「スポーツとしてゲームが認識されるかどうかだ」と慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科の中村伊知哉教授は指摘する。

 現在、eスポーツを楽しむ人の数は世界で3億人余りと推計され、21年には5億人を超えるとされる。今後、新興国でも爆発的に広まれば、サッカーなどと並ぶ世界的なスポーツに育つ可能性もある。イベントも目白押しで、8~9月にインドネシアのジャカルタで開催されるアジア競技大会(アジア大会)では、eスポーツも公開競技としてプログラムに入っている。コナミデジタルエンタテインメント(東京・港)のサッカーゲーム「ウイニングイレブン(ウイイレ)2018」が競技ゲームの一つに選ばれ、話題となった。日の丸を背負った日本代表選手が選ばれるなどイベントを重ねることで認知度も高まる。

 アジア大会では、22年の中国・杭州大会から正式種目となる。日本でも19年の国民体育大会(国体)で、文化プログラムの枠でeスポーツの競技会を開く予定。将来は、オリンピックの正式種目への採用も期待されており、21年には市場は16億ドルに広がるとの見方もある。

 しかし現状ではまだ趣味や遊びどまりととらえられ、プロゲーマーを目指したくても親に反対される若者は多い。「ゲームで育った世代が親になり、これからは理解が進む」と専門家らはみる。20年度には小学校でのプログラミング教育が必修化され、ゲームをするだけではなく作ることもより身近に感じる若者が増えてくれば、裾野が広がる好循環が期待されている。

(渡辺岳史、桜井芳野)

■科学者の卵を育む カリフォルニア大アーバイン校
 カリフォルニア大アーバイン校(UCI)は2015年に「eスポーツプログラム」を開設したた。16年にはeスポーツ専用アリーナもオープンし、学術界におけるeスポーツ分野の先駆者を自負する。同プログラム代表代理のマーク・デップさんに聞いた。

 UCIは世界的なエリート大学間の競争を生き抜いていかないといけない。eスポーツ専門のプログラムがあることで「革新的な大学」という立場を明確にすることが、開設の動機だ。

 もともとUCIはコンピューターサイエンスの分野が強く、専攻分野にコンピューターゲーム・サイエンスもあったことも大きい。

 10年からは、STEM(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学の頭文字を合わせたもの)分野でのキャリアに関心を持ってもらうため、地域で高校生向けの活動をしてきた。その一貫で高校生向けのeスポーツ・リーグの創設にもかかわってきた。好きなことから専門分野へと興味を広げていく。それが我々の考える教育だ。

 専攻は学生の自由だが、コンピューター・サイエンス、コンピューター・エンジニアリング、ビジネス経済学が人気。大学教授陣、ゲーム関連企業、卒業生とも密接に連携し、学術的な研究だけでなく、ビデオゲーム、eスポーツ業界への就職も積極的に応援している。

 18―19年度には60人が、プログラムに参加する予定だ。UCIを代表して試合に出るチームの学生には年6000ドル(約65万円)、その下のチームには年1000ドルの奨学金が出る。

 大学eスポーツも競争が年々激しくなっているが、UCIチームはセミプロレベルなんだ。もちろん、学校の成績もエリートクラスであることを求めている。

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