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プロランナーとしての生き方とは…

マラソンの川内優輝選手が「公務員ランナー」から「プロ」への道を選択した。私自身40歳にして15年間勤めた公務員を辞め、プロトレイルランナーとして独立したこともあり、彼の決断には特別な思いを抱いた。もちろん、彼の方はマラソンという花形スポーツで、立場も状況も随分違うはずだが。

公務員時代とプロ、一番の違いは何かと考えると、覚悟とプレッシャーではないかと思う。

公務員時代にエンデュランスラン箱根50Kで優勝した

公務員であれば、仕事以外の全ての時間で全身全霊を込めて闘っていたとはいえ、客観的にみると走ることは趣味の範疇(はんちゅう)を出ない。そのため気分的には楽だった。そうはいいつつも、天気のいい日だと、「この仕事の時間に山を走れたらどれほどいいだろうか」と焦って落ち着かないこともあった。

一番の違いは覚悟と重圧

ところがいざ結果のみで全てが判断されるプロの立場になってみると、予想はしていたもののこの世界で自分が生きていけるのかという底知れぬ不安に襲われた。

公務員という生活がある程度保証された立場から、極めて不安定な状態への転身だけに、今自分がしていることが正しいステップアップなのかどうかという迷いが常に生じた。心にぽっかりと大穴が開いた気持ちになることも。

こうした葛藤の苦しさから抜け出すために、走ることも含めて全てのことを「遊び」と思うようにした。競技以前にそもそもランニングが楽しいから自分は走るのだし、苦しいトレーニングや試合前のプレッシャーも含めて楽しい遊びだと考えた。すると肩の力が抜け、不安の波を乗り越えることができた。

さらにこの種の不安を取り除く唯一の方法はトレーニングに打ち込むことだと気づいた。だが時間の融通がつけやすいプロの環境では、ともすると限りなく自分を追い込んでしまう。実際、何度もけがをしたり体調を崩し、ついには選手生命に関わるほどの足かけ4年にも及ぶ大きな故障を患ってしまった。

それからは体のケアやリカバリーにより多くの時間を割くのに加えて、サラリーマン時代にはできなかったこと、ランニングとは関係のないジャンルの講演を聞いたり、読書したりといったことも意識的に取り入れた。一見無駄に思える経験でも長い目でみればその後の競技でプラスになった。そのうち少しずつ練習量を増やせるようになり、次第に努力が結果に結びつき始めた。

多くの若者が箱根駅伝など晴れの舞台を夢見ているが、次のステージに進み、世界を目指せる選手はごくわずかだ。川内選手は箱根駅伝には出場したものの、その後は自分自身で研究を重ね、世界の舞台までほぼ独力で到達した無二の存在。地道な努力を要する長距離走は、学生時代の努力がすぐに実を結ぶとは限らない。このような選手の夢を後押しする存在として指導的な立場でも活躍してほしい。彼の生き方の姿勢と熱く思い描いてきたものを社会に伝えるのも、注目されるプロだからやれることかもしれない。

(プロトレイルランナー)

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