2019年5月21日(火)

南北融和へ、高まる期待 分断の歴史に終止符を

2018/6/12 11:59
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祖国の分断に翻弄された歴史に変化は訪れるのか――。12日午前に始まった米朝首脳会談を在日コリアンが特別な思いで見守っている。南北分断から70年。国内では在日本大韓民国民団(民団)と在日本朝鮮人総連合会(総連)に分かれて対立が続くが、会談は南北の融和を大きく進展させる可能性がある。「実りある会談を」。関係者は祈るような思いで訴えた。

米朝首脳会談を報じるテレビを見る在日コリアンら(12日午前、大阪市生野区)

「本当に朝鮮半島に平和は訪れるのか。無駄な争いをやめて、同じ民族同士で手を取り合いたい」。さいたま市の在日2世、朴重賢さん(64)は会談の行方を真剣な表情で見守った。

埼玉県川越市で13年前から、江戸時代に朝鮮王朝が日本との友好のために派遣した外交使節団「朝鮮通信使」の仮装をするパレードの実行委員を務める。「政治の問題に翻弄されず、市民が楽しく交流しよう」との考えから、地元の朝鮮学校舞踊部の生徒や韓国人留学生らが国籍にかかわらず参加する。

朝鮮の伝統音楽などに合わせて約400人が行進する光景からは想像が難しいが、韓国籍の朴さんの人生にも分断の歴史が影を落としてきた。

祖父ら親戚は帰還事業で北朝鮮へ渡り、金の無心をする手紙が何度も届いたが、近年は連絡が途絶えた。若い頃は家族の勧めで民族教育を学ぶため一時的に朝鮮学校に通い、民団と総連を行き来して、主義をぶつけあう民族団体のはざまで悩んだこともある。

「組織が絡むと人は敵対する。市民の交流を大切にしたい」と朝鮮通信使の活動に力を入れてきた朴さん。「南北の融和が進めば思い描いた朝鮮半島の理想に近づく。実りある会談にしてほしい」と願った。

大阪市生野区の韓国籍の鄭甲寿さん(63)は朝鮮半島の統一と東アジアの平和を願い、1985年から「ワンコリアフェスティバル」と銘打ったイベントを開いてきた。4月の南北首脳会談から続く大きなうねりを「祖国統一の道筋が見えてきた」と感慨深げに話す。

「日本に38度線はない。我々が統一のシンボルとなり、融和を後押ししたい」との思いから在日コリアンの交流を促してきた。だが南北首脳会談の際は総連と民団に合同パブリックビューイング(PV)を持ちかけたものの実現しなかった。

鄭さんは「祖国が統一しない限り、日本における分断も克服できない」と指摘。12日の会談を「民族融和という観点だけでなく、東アジアの平和と繁栄のためにも重要なプロセス」と期待した。

「これからは国籍の違いという心のわだかまりを乗り越えていかないといけない」。さいたま市に住む朝鮮籍の在日2世、文八智さん(68)は、米朝首脳会談を伝える12日朝のテレビニュースを見ながら、自らに言い聞かせるように言った。

生まれた翌年に朝鮮戦争が始まり、祖国の分断は決定的になった。育った日本の在日社会も朝鮮籍と韓国籍とで分断されていたが、心の中では「両親の故郷がある韓国の慶州市に行ってみたいと思っていた」という。

4月に南北首脳会談が実現したときから米朝首脳会談につながる流れを予想していたといい、「終戦宣言や半島の統一もそう遠くないと確信している」と声を弾ませた。「とうとうこの日が来た。歴史的という3文字ではとても言い表せない」

■会談実現「ほっとした」
 在日コリアンの市民団体、コリアNGOセンター(大阪市生野区)のメンバーら約10人は12日午前、テレビ中継で米朝首脳会談の様子を見守った。トランプ米大統領と金正恩委員長が握手を交わすシーンが映ると拍手と歓声が起こり、涙を拭う人もいた。
 事務局長を務める在日3世の金光敏さん(46)が周囲の在日コリアンらに参加を呼びかけた。
 在日3世の非常勤講師、金未裕さん(27)は「一度は中止になると言われたが、実現してほっとした」と安堵の表情。「とても友好的な雰囲気。朝鮮戦争の終結という良い結果につながることを期待したい」と語った。

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