2019年5月25日(土)

大阪の企業流出、嘆き不要 大阪大学名誉教授 宮本又郎さん(もっと関西)
私のかんさい

コラム(地域)
2018/6/12 11:30
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■大阪大学名誉教授の宮本又郎さん(74)が館長を務める大阪企業家ミュージアム。五代友厚、松下幸之助など経済人105人の足跡が展示され、企業家を育む都市としての大阪を思い起こさせる。

 みやもと・またお 1943年福岡県生まれ。神戸大学卒。88年大阪大学教授、2006年から名誉教授。専攻は日本経済史、日本経営史。大阪商工会議所が運営する「大阪企業家ミュージアム」の館長も務める。著書に「商都大阪をつくった男 五代友厚」など。

みやもと・またお 1943年福岡県生まれ。神戸大学卒。88年大阪大学教授、2006年から名誉教授。専攻は日本経済史、日本経営史。大阪商工会議所が運営する「大阪企業家ミュージアム」の館長も務める。著書に「商都大阪をつくった男 五代友厚」など。

大阪発祥の企業が成長し、東京に本社機能などを移すと嘆く人が多い。しかし会社に実力がついたから東京や海外に進出するのであって、むしろ祝福した方がいい。日本のプロ野球で活躍した松井秀喜氏や大谷翔平が米大リーグに渡り、世界で通用することを証明したのと似ている。

優れた選手が大リーグに去っても別の人材が入ってくればいい。北海道日本ハムファイターズが好例だ。ダルビッシュ有が抜けても大谷が入り、大谷が抜けても清宮幸太郎が入ってくる。大事なのは次代を担う人材を育て続けることだ。

かつての大阪も次々と企業を育てる都市だった。資金の供給という面では、明治期の銀行家である岩下清周が企業家の人物像を見極めてカネを貸し、阪急電鉄や近畿日本鉄道、大林組などを育てた。現代ではスタートアップ企業に投資するベンチャー・キャピタルが必要で、大企業にもその役割を期待したい。

先に成功した経営者が指南役にもなっていた。三洋電機の創業者、井植歳男は関西の企業家を集めた「井植学校」で、大和ハウス工業創業者の石橋信夫や、ダイエー創業者の中内功らを育てた。生前の石橋氏に聞いた話だが、井植に不動産を見てもらい、ホテルなどを建ててうまくいくかと助言を求めたという。

現代の指導者は京セラの稲盛和夫名誉会長くらいだろうか。企業家が育つには経済的な条件に加え、人々が集う魅力が都市に求められる。それは文化だ。

■大阪は歴史的にダイナミックな変遷を遂げてきた、というのが持論。今後の都市像を考えるうえでも文化がカギになるという。

大阪は昔から商人の町というイメージが強いが、実はそうではない。歴史的には4つの大きく異なる顔を見せてきた。古代は難波宮があった王都・国際港湾都市だった。中世は本願寺に象徴される宗教都市で、近世は豊臣秀吉が治めた武家の政権都市に変わった。江戸時代に経済都市となり、今日に至っている。

松下幸之助など105人が一堂に会する大阪企業家ミュージアム(大阪市中央区)で

松下幸之助など105人が一堂に会する大阪企業家ミュージアム(大阪市中央区)で

大阪の企業は戦後、良質なモノを安く大量に生産することで成長を続けてきた。だが現在、物理的に優れた製品を供給するだけでは世界的な競争に勝てない。米アップルのようなデザイン力、スイスの時計メーカーのようなブランド、知的財産といった無形資産が重要になる。大阪の企業はモノづくりが得意だが、無形資産を重視しなかったために競争力が低下した。

都市としての大阪も、戦後は無形資産を生み出す土壌としての文化を軽視してきた。建築物などにカネをかけることを無駄、ぜいたくと考えてきた。私が通った大阪府立池田高校の校舎も、他の高校と同じような画一的な建物だった。

文化への投資を惜しんだために、コンサートを聴いたり、芝居を見たりする機会も東京に比べて少ない。特に若い人にとっての魅力で差がついた。遠回りでも、文化や教育への投資が経済力も高めることになる。

文化そのものは色々ある。例えば江戸時代に大阪町人の出資で開かれた学問所「懐徳堂」や、医者・蘭学者の緒方洪庵が創設した「適塾」は文化水準が高く、教育の場として優れた人材を輩出した。その理念は阪大に受け継がれている。

■大阪の高校から神戸大学に進学。当時は関西圏に今より一体感があったと振り返る。

私のように関西の府県をまたいで進学しても違和感はなかった。かつて大阪・船場の商人は、兵庫県の芦屋に自宅を構え、夜は京都で遊んでいた。京阪神は一体という感じだった。それを取り戻そうとしたのが関西広域連合なのだろう。大阪は文化を尊重するという点で、同じ関西の京都を参考にする余地があるのではないか。

(聞き手は堺支局長 塩田宏之)

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