2019年8月25日(日)

企業統治不全の三菱マテ、追い込まれた社長退任

2018/6/11 23:00
保存
共有
印刷
その他

品質データ改ざんなどの不正が相次いだ三菱マテリアルは11日、竹内章社長(63)が退任すると発表した。後任には小野直樹副社長(61)が昇格する。同社では2017年11月以降に子会社の不正が発覚し、不正製品の出荷先は延べ800社を超えた。竹内氏は3月に続投を宣言し幕引きを図ったが、本体でも不正が発覚し引責辞任に追い込まれた。企業統治が機能していない現実があらわになった。

謝罪する三菱マテリアルの竹内章社長(右から2人目)ら(写真は3月の記者会見)

「一連の品質問題の経営責任を明らかにする」。11日正午に社長交代を発表した三菱マテ。記者会見はなく、竹内氏のコメントが発表されただけだった。

竹内氏が直近で報道陣の前に姿を見せたのは3月末。「二度と不正を起こさないことが経営陣の責務だ」。不正の最終報告書に関する記者会見で、自身の責任を問われても続投を表明した。

その時点で不正を公表していたのは子会社のみ。三菱電線工業(東京・千代田)などでは不正を認識しながら発覚後の対応で不手際があったとして社長を更迭。グループ全体で不正製品の出荷先は、先に問題を公表した神戸製鋼所を上回る規模に膨らんだが、本体経営陣の処分は役員報酬の返上にとどめた。

だが今月8日、本体の直島製錬所(香川県直島町)で一部製品の日本工業規格(JIS)が取り消され、事態は一転した。銅製錬の副産物であるコンクリート用の骨材で、JIS規格から外れた製品を規格内として試験成績書に記載。2回やるべき製品試験も1回しかやっていなかった。

JIS取り消しの事業上の影響は軽微とみられるが、直島製錬所は年間20万トン以上の銅を生産する主力拠点。17年に操業100周年を迎え、銅事業の源流でもある。不正はお膝元にまで広がり、強気だった竹内氏も辞任を余儀なくされた。

一連の問題で同社の対応は常にずさんだった。最初の不正を公表して以降、4回にわたりさみだれ式に不正を公表。一部は「顧客への説明が済んでおり、解決した」と詳細の公表を控えた。直島での不正は、遅くとも竹内氏が続投を表明した3月時点で把握していながら発表を見送っている。

1990年に三菱金属と三菱鉱業セメントと合併してできた三菱マテは、金属とセメントの他にも超硬工具や電子材料など多くの事業を手がける。カンパニー制を導入し個別に採用するなど事業の独立性が強く組織が縦割り化していた。

15年に社長に就いた竹内氏は人事や法務部門の経験が長く、統治強化を期待されていた。だが現場を知らないため求心力が低く不正は拡大した。今回は社外取締役含め統治がほとんど機能していなかった。

直島製錬所の問題の責任を取り金属事業トップの役員報酬30%返上や、同所長の更迭が決まった。一方で竹内氏は22日付で代表権のない会長にとどまり、社長になる小野直樹氏も不正発覚当初から問題対応を主導する立場で責任の一端はある。

神戸製鋼など不正があった企業はトップが社長、会長から退くケースが多いなか、三菱マテは主要な取締役の顔ぶれが変わらない。「ガバナンス強化策の迅速かつ確実な実行が企業価値維持のために不可欠」。竹内氏が説く社長交代の理由にはむなしさも残る。

三菱マテの足元の株価は17年11月の不正発覚直前より約2割安い水準だ。財務担当として市場と向き合う役割を求められてきた小野氏のもとで統治が機能するか試される。

(鈴木泰介、大西智也)

 三菱マテリアルの竹内章社長の引責辞任について、識者に話を聞いた。
中島経営法律事務所の原正雄弁護士 工業標準化法(JIS法)が長年変わっていないため、取引先からの要求がJIS以上だったり、逆にある側面ではJIS以下になっていたりと、現場に合致していない部分がでてきている。素材を熟知しているメーカーは「必ずしもそこまでしなくてもいい」と自社の都合を優先してしまったのではないか。
 強度などの耐久性が確認されていれば、データ改ざんなどの金属の不正が見つかりにくく、金属は不正があっても、発覚まで時間がかかりやすい。金属メーカーにはモラルが問われている。
ガバナンス助言会社プロネッドの酒井功社長 コーポレートガバナンス(企業統治)のカギは社外取締役と社外監査役の機能強化にある。三菱マテリアルの場合も社外役員のけん制作用が働かなかった。立派な経験を持つ人を外部から呼んでも、他社の不祥事を踏まえて現経営陣に対し問題がないか問い詰める姿勢が甘い社外役員だと自浄作用につながらない。
 さらに社外取締役も工場に出向いたりして現場と接する機会を増やし、「この人なら話せる」といった信頼感を社員と醸成していくことが必要だ。これもけん制機能の強化につながる。

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。