2018年11月19日(月)

中国貧困地域 企業の一大データ拠点に

The Economist
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2018/6/15 5:50
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中国南部、貴州省の省都貴陽市の郊外に、新しいテーマパーク「東方科幻谷」が開園した。園の中心にはパリの凱旋門より背の高いロボットがそびえ立つ。スタッフは宇宙船の乗組員さながらの青と銀の制服を身にまとい、SF「スター・トレック」に出てくるバルカン人のようなあいさつをしてくれる。

呼び物は屋内のローラーコースターだ。乗客は1人ずつVR(バーチャルリアリティー)用ヘッドセットをつけ、未来都市の上空で行われる空中戦の中を飛び回る感覚を味わう。屋外では黒い制服を着て、長い棒を手にした警備員たちが恐ろしげな雰囲気を醸し出す。

このような光景は、貴州省には不釣り合いに思える。山の多い同省は中国の中でも特に貧しい地域だからだ。同省の人口は約3500万人。そのうち400万人以上が1日1.9ドル(約208円)以下で生活しているという。2016年のインターネット普及率は45%に満たなかった。

しかし5年前から貴州省は、巨大なデータセンターに適した場所として大企業に売り込まれ始めた。そして現在この地域はIT(情報技術)ブームに沸いている。東方科幻谷にほど近い丘のふもとでは、中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)が、爆撃にも耐えられる地下空間を掘りあげたところだ。巨大な5つの出入り口を持つこの空間に、同社最大級のサーバーセンターが置かれることになっている。米アップルも昨年、この地域に10億ドル(約1100億円)を投資すると発表。今年4月25日に、ここで中国最初のデータセンターの起工式を行った。

■内陸部が選ばれた理由

中国は以前から、重要な産業を内陸部で発展させようとしてきた。1960年代には毛沢東が、兵器製造をはじめとする多くの製造業を、攻撃を受けやすい沿岸部から遠ざけ始めた。

多くの企業が活動拠点を設ける貴陽市は5月下旬、「ビッグデータエキスポ」を開き、盛況だった=ロイター

多くの企業が活動拠点を設ける貴陽市は5月下旬、「ビッグデータエキスポ」を開き、盛況だった=ロイター

現在、中国はビッグデータやAI(人工知能)など最先端の研究で世界のトップに立つことを目指している。それには、多くの技術者が集まる沿岸部を選ぶほうが理にかなっている。しかし中国は、この分野の一部の企業に、沿岸部の豊かで活況を呈する都市から離れることを奨励している。

今回は、安全保障が沿岸部から離れる大きな理由ではない。中国政府は2015年に、貴州省をビッグデータ開発の「国家試験区」にすると宣言した。それには2つの理由があった。

1つは、中国の急速な発展から取り残された地域を活性化するとの約束を守るためだ(中国の習近平=シー・ジンピン=国家主席は17年の中国共産党大会で貴州省の代表として出席し、同省を支援する姿勢を示した)。

2つ目は、工業化の遅れた地域が汚染源となる工場を造らずに近代化できることを示すためだ。中国のほかの都市はスモッグにまみれている。だが17年に貴州省を訪れた観光客は前年より40%も増えた。多くの人がその美しい風景に引き寄せられている。

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