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使用済み核燃料貯蔵、むつに近づく関電 東電には思惑

原子力発電所の使用済み核燃料を一時的に保管する中間貯蔵施設を巡り、電力会社の間で駆け引きが続いている。関西電力東京電力ホールディングスと日本原子力発電(原電)が青森県むつ市に持つ施設への搬入を検討しているとみられるが、難航。8日のむつ市と東電、原電それぞれとの会談では、両社から慎重な発言が相次いだ。関電から原発事業での協力を引き出すための方策との見方もある。

「地域が傷ついている。公開の場で真相を明らかにする」。8日、むつ市の宮下宗一郎市長は、同市役所に呼び出した東電と原電の幹部にこう指摘した。東電と原電が共同で運営するむつ市の中間貯蔵施設の事業会社に対し、関電が出資するとの一部報道があり、説明を求めた。

東電の宗一誠常務執行役は「事業の変貌をきたすような相談は一切行っていない」と話し、原電の村松衛社長も「(報道に)驚いている」と発言。両社は事前に関電から説明はなかったと主張した。ただ記者団から将来も受け入れるつもりはないのか問われると両社とも「仮定の話はできない」と含みを残した。

関電は今春の大飯原発3.4号機(福井県おおい町)の再稼働に際して、福井県知事から県外での施設確保を求められた。電力会社は原発の稼働で出た使用済み核燃料を建屋内のプールや敷地内に貯蔵しているが、関電はプールでの貯蔵が6~9年で満杯になる見込み。このため「今年中に候補地を示す」としている。

東電と原電がむつ市で建設を進める中間貯蔵施設「リサイクル燃料貯蔵」は東電が8割、原電が2割出資しており共同で使用する予定だ。原発敷地外では日本で唯一の中間貯蔵施設でもある。原発に対する世論が厳しい中、関電が中間貯蔵の新たな候補地を示すことは簡単ではない。電力業界では「むつで受け入れるしかない」との声が漏れる。

ただ話はそう単純ではない。東電などは、むつ市の誘致から7年にもわたる協議の末、施設を着工した経緯があるためだ。そうした背景から、東電と原電は使用済み核燃料の受け入れを関電との交渉のカードにするとみられている。

東電が得たいのは、むつ市に隣接する青森県東通村で建設中の東通原発での協力だ。東電は他の事業者と協力して建設を進める方針を掲げるが、「電力各社は自分の原発の再稼働にも手がかかり、なかなか進まない」(東電幹部)。一方の原電も、国の審査が続く東海第2原発(茨城県東海村)の再稼働に向けて、約2000億円の安全対策投資費の工面が必要で、電力各社に支援を求めている。

関電はこの2案件に慎重な姿勢を示してきた。だが、むつへの搬入との引き換えに進展するのではないか、というのが多くの業界関係者の見方だ。経済産業省としても30年の原発の比率を20~22%にする目標を掲げるだけに、使用済み核燃料の行き先に困って関電の原発が動かないような事態に陥るのは避けたいところだ。

一方で受け入れる立場の地元自治体は、使用済み核燃料を再処理して原発の燃料に再利用する「核燃料サイクル」の進捗遅れも警戒している。新たな燃料の受け入れは経済的な恩恵が期待できるが、中間貯蔵が「中間」でなくなる懸念もあるからだ。電力会社や国の思惑が先走れば、地元の態度に影響しかねない。

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