「100年に1度の大転換期」(トヨタ自動車の豊田章男社長)といわれる節目を迎えた自動車業界。人工知能(AI)の活用や自動運転、脱ガソリンといった「大転換」の中でもいち早く実用化が進んでいるのが「つながる車(コネクテッドカー)」の技術だ。これまでの自動車産業のピラミッド構造の中には存在しない「つながる技術」を求め、自動車各社が熱視線を送るのが、スタートアップ企業だ。
自動車大手はこれまで、「つながる技術」を求めて通信会社や半導体メーカーとの提携を進めてきた。クルマに通信インフラを搭載するためだ。例えば、米フォード・モーターは米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズと提携して現在、携帯電話で広く使われる4G(LTE)を搭載した。トヨタ自動車は4GでKDDIと提携する一方、次世代の通信規格「5G」ではNTTと手を組んだ。
だがここ数カ月は、コネクテッドカー技術を取り込むために未上場のスタートアップ企業に目を向ける動きが目立っている。2017年のコネクテッドカー関連のスタートアップ企業への投資額は過去最高の5億ドルに達した。
■「大手メーカー×スタートアップ」企業相関図
CBインサイツは独自の企業相関図に基づき、完成車・部品メーカーによるコネクテッドカー技術のスタートアップ企業への投資状況をまとめた。13年以降に1社以上への出資や買収の実績がある自動車関連メーカー18社を対象に分析を実施した。
17年のコネクテッドカー関連のスタートアップ企業への投資額のうち、特に多かったのが2つの技術に関するものだ。ひとつはクルマを道路インフラや他の車両など様々なものと結ぶ、いわゆるV2X。ふたつ目は車内でドライバーと情報をやり取りするテレマティクスだ。この2つの技術を開発するスタートアップ企業への投資が全体の43%を占めた。
オレンジの線は買収、緑の線は出資を表す。赤い枠で囲まれた企業はV2Xとテレマティクスの一方または両方を開発しているスタートアップ企業を示す。
こういった提携関係は必ずしも1対1ではなく、複数の企業と手を結ぶオープンな関係であることも特徴だ。実際、V2Xやテレマティクスのスタートアップ企業は複数の自動車メーカーから出資を受けている例が多い。
米Nauto(ナウト)は17年7月、シリーズBの増資ラウンドで1億5900万ドルを調達した。増資には独BMW、米ゼネラル・モーターズ(GM)、トヨタなどが参加した。ナウトが開発したV2X技術は既に実用化されている。衝突を検知したり運転手の行動を把握したりするために使われている。
トラックの隊列走行に使うV2X技術の開発を手掛けるテレマティクスのスタートアップ、米Peloton Technology(ペロトン・テクノロジー)も多くの完成車・部品メーカーからの出資を受けている。6000万ドルを調達した際は、デンソーやカナダのMagna(マグナ)、スウェーデンのボルボ・カーに加え、米防衛大手ロッキード・マーチンや米物流大手UPSも参加した。
■自動車部品メーカーはサイバーセキュリティーに注目
一方、自動車部品メーカーに限れば、サイバーセキュリティーを手掛けるスタートアップ企業への投資が増えている。
デンソーは米Dellfer(デルファー)と米ActiveScaler(アクティブスケーラー)に出資。独コンチネンタルは17年11月にイスラエルのArgus Cyber Security(アルグス・サイバーセキュリティー)を買収。米Aptiv(アプティブ)は17年1月、Movimento Group(モビメント・グループ)を取得した。アルグスはコンチネンタルに買収される前に、マグナからの出資も受けている。