2018年10月21日(日)

浮体式風力発電、実用化急ぐ 日立造船が実証実験へ

2018/6/8 12:48
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新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日立造船は8日、日立造船堺工場(堺市)で浮体式洋上風力発電装置の浮体構造部を公開した。9月から3年半の実証実験に入る。浮体式は、深い海でも設置できるメリットがあるが、まだ世界的にも事例が少なく国内の実験は今回を含め5例にとどまる。先行する欧州と実用化を競っており、設置ルールなどの整備が課題だ。

北九州の響灘に移送してタワー部や発電機、風車の2枚の羽根などを取り付ける(堺市の日立造船堺工場)

北九州の響灘に移送してタワー部や発電機、風車の2枚の羽根などを取り付ける(堺市の日立造船堺工場)

■直径100メートル、2枚羽根

出力は3000キロワットでタワーや羽根はドイツの企業が設計、製造したものを使う。北九州港沖15キロの響灘に移送してタワー部や発電機、風車の2枚の羽根などを取り付ける。一般的な3枚羽根に比べ、施工コストは安いが、回転力が小さいため、直径は100メートルとやや大きい。鋼製の浮体は中空のロの字型で、水深54メートルの海域に設置する。事業費等は公表していない。コスト削減のため将来はコンクリート製の浮体建造も検討する。

いま政府は洋上風力発電の普及に向け、海上の利用ルールを定めた新法の提出準備を進めている。「世界的に石炭と原子力から再生可能エネルギーに軸足を移す動きが加速し、中でも風力への期待が高まっている」(エネルギー戦略研究所の山家公雄所長)からだ。

鋼製の浮体は中空のロの字型で、水深54メートルの海域に設置する

鋼製の浮体は中空のロの字型で、水深54メートルの海域に設置する

洋上風力発電は水深によって海底に基礎を設置する「着床式」と、海面に浮かぶ浮体構造物を鎖などで海底と係留する「浮体式」を使い分ける。一般に水深50メートルより浅い海域は着床式、深い海域には浮体式を採用する。着床式は浅い海に限界があり、適した海域は浮体式の方が広い。

風力発電の国際的業界団体である世界風力会議(GWEC)によると、世界で2017年末時点の風力発電の累積設備容量は5億3912万キロワットで、このうち洋上風力発電は1881万キロワットと3.5%を占めた。

■漁業補償がネックに

欧州各国は洋上風力に力を入れており、英国は684万キロワットで世界首位、ドイツが536万キロワットで2位、中国が279万キロワットで3位。以下、デンマークが127万キロワット、オランダが112万キロワットで続く。日本は6万5000キロワットで10位だ。

同じ島国ながら英国は日本を大きく引き離している。実は英国の沿岸部の権益は英王室の資産を管理する団体「クラウンエステート」が一括管理しており、発電事業者はこの団体の許可を得て事業展開する。個別の漁業補償で複雑な交渉が不可避の日本は条件面で不利だ。「今回は実証試験のため漁業補償は支払わない」(NEDOの伊藤正治統括調査員)

日立造船の浮体式洋上風力発電設備の完成予想図

日立造船の浮体式洋上風力発電設備の完成予想図

英国では北海油田の資源枯渇が懸念され、関連業界の業態転換や雇用確保が政治課題になりつつある。洋上風力発電プラントの建造・維持管理が受け皿と期待され、後押しされている面もある。

洋上風力は発電プラントを沖に設置する関係で、陸上よりも手間を要する。保守点検作業の輸送業務などに漁業関係者を雇えば地域に雇用機会を提供できる。風力エネルギー研究所の戸塚義孝上席研究員は「とにかく地域の理解と協力を得ることが洋上風力発電成功のカギ」と語る。

■コスト削減、大型化がカギ

船を使い点検のコストが割高になりがちなことからプラント自体を大型化して出力あたりの点検回数を減らし、維持費を抑えるケースが多い。風力発電プラントは大型化する一方で、世界最大の設備はフランスにあり、風車の直径が180メートルだ。国内最大の観覧車「レッドホース オオサカホイール」(大阪府吹田市)の直径が114.7メートルなのと比べればその大きさがよく分かる。

日本の領海・排他的経済水域の面積は世界有数の約447万平方キロある。環境省は日本の洋上風力発電のポテンシャルを16億キロワットと試算しており、膨大な発電能力を秘めている。

国内で1000万キロワットの洋上風力発電が実現すれば直接投資が5兆~6兆円(30年までの累計)、経済波及効果が13兆~15兆円(同)、30年時点の雇用創出効果が8万~9万人を見込める。

(編集委員 竹田忍)

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