「四半期決算は不要」バフェット氏
「企業が四半期決算に縛られると、数字合わせという操作に走り、企業の長期的重要関心事に反する愚かなことをするものだ。この操作は一旦始めるとやめられなくなる傾向がある。最高経営責任者(CEO)がxxドルなどと四半期利益予測を出し、その企業の業績が改善された例など見たこともない。結果的に、企業は誤った情報を発信していることになる。私はマネジャーたちに、50年続く同族企業に居るつもりでやれば、正しい決定ができるものだと説いている。私は20ほどの企業の顧問をしているが、目標達成が困難になると数字を操作するという悪癖に陥りがちだ。しかも一度始めたらやめられなくなる。IR部門が風評被害を恐れ口を挟み、愚かなことをしがちなのだ」
著名投資家バフェット氏がメディアで、企業のCEOによる四半期決算ガイダンス(利益予想)に苦言を呈している。バークシャー・ハザウェイは四半期業績見通しを発表していない。
今回は、米銀行界のリーダー格ダイモン氏(JPモルガン会長兼CEO)も共同戦線の論陣を張った。
「四半期の数字作りのため、CEOはマーケティング予算を削減したり、新規支店を断念したり、安売り競争を展開したりする。バフェット氏のおっしゃるように、数字操作は自己増殖するものだ」
「企業側では業績予測を発表して、それを達成することが重要視される。例えば、数百万ドルの予算規模の良い投資機会があれば、長期的視点で経営陣は決断すべきだが、短期業績への影響を懸念する圧力もかかる」
「水上のコルクは沈んでもすぐに浮き上がる。正しいことを続けていれば、厳しいことはあっても、長期的には回復できるものだ。スマートな株主は気にしない」(ダイモン氏発言)
四半期ガイダンスのそもそもの論拠には、投資家とのコミュニケーション、透明性、株価変動率抑制による株価上昇傾向などが挙げられる。四半期ごとに投資家に情報という判断材料を提供することは企業の義務との意見も根強い。もし企業が業績見通しを発表せねば、アナリストたちが様々な評価を発表するので投資家は戸惑うであろう。そこで、直接情報を知り得る企業自身が責任もって判断材料を提供することは重要との意見だ。とはいえ、数百ページに達することもある発表資料を果たしてどれだけの投資家が読みこなせるのか、との現実的見解も目立つ。
一方、業績予測の下振れ・上振れが株価乱高下を助長するケースが少なくない。
事例は異なるが、テスラ社のマスクCEOが、前回決算発表後のアナリストミーティングで、アナリストの質問を「ボーンヘッド=愚かな間違い」と表現して顰蹙(ひんしゅく)をかったことがある。そのときの発言に「自動運転のような長期プロジェクトは四半期決算で評価されるべきではない」と述べたこともあった。
この議論はこれまでも繰り返されてきたが、バフェット氏とダイモン氏が組むと、市場の注目度も高まる。今後も波紋が広がりそうだ。

豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
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