2018年10月24日(水)

「認知症の恐れ」で運転断念4割 検査強化1年
免許取り消し・停止は1892人、2016年の3倍

2018/6/7 10:25
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高齢ドライバーの認知機能検査を強化した改正道路交通法施行から約1年間で、「認知症の恐れがある」と判定された約5万7千人のうち4割が免許の自主返納などで運転をやめていたことが7日、警察庁のまとめ(暫定値)で分かった。このうち認知症の診断を受けて免許取り消しや停止となった人は1892人で、2016年1年間の3倍となった。

高齢ドライバーが小学生の列に突っ込み、児童1人が死亡した事故の現場(2016年10月、横浜市港南区)

高齢ドライバーによる事故が問題になるなか、検査がきっかけとなって自主的にハンドルを握るのをやめる高齢者が増えているとみられる。検査強化の効果には限界もあり、認知症以外の機能低下の研究、車以外の交通手段の確保など、なお課題は多い。

17年3月12日施行の改正道交法により、75歳以上が免許更新時などに受ける認知機能検査で「認知症の恐れがある」(第1分類)と判定された場合、医師の診断を受けることが義務になった。

警察庁が施行から今年3月末までの状況を集計したところ、検査を受けた約210万人のうち5万7099人が第1分類だった。判定後、医師の診断前に免許を自主返納した人は1万6115人、更新せずに免許が失効した人は4517人。警察庁の担当者は「検査が自分の認知機能を把握するきっかけになっている」とみる。

医師の診断を受けたのは1万6470人で、認知症と診断された1836人が免許取り消し、56人が免許停止となった。「今後認知症になる恐れがある」などとされ、免許は継続できるが一定期間後に診断書を提出しなければならない人も9563人いた。

法改正前の16年は、第1分類と判定された約5万1千人のうち、医師を受診したのは1934人、免許の取り消し・停止は597人だった。

自主返納の制度は1998年に始まり、その後、免許証の代わりに本人確認書類として使える「運転経歴証明書」を交付する仕組みも導入された。

証明書を提示することで、自治体によってはバスやタクシーの料金が割り引かれるほか、店頭で購入した商品を自宅まで無料で配送するサービスを行う企業もある。

全国の警察も、警察職員が自宅を訪問して受理したり、代理人による申請を認めたりと、自主返納を促すための環境整備を進めている。

こうした取り組みを背景に自主返納は急増。17年1年間に75歳以上で返納した人は約25万4千人で、前年の1.5倍になった。

ただ、認知機能検査の強化の効果は限定的だ。集計によると、第1分類は受検者全体の2.7%にすぎず、「認知機能低下の恐れ」(第2分類)と判定されても、講習を受ければ原則3年間運転できる。こうした高齢者が事故を起こさないようフォローする仕組みづくりは今後の課題だ。

また、車の運転は認知機能検査では測れない視野や身体能力なども影響する。「認知機能と運転技術は必ずしも同じではない。高齢者の免許更新時には実車を使った実技と学科試験を行うべきだ」(順天堂大の新井平伊教授)との指摘もある。

認知症と診断されない高齢者への目配りについては警察庁も重くみている。加齢による機能低下と事故との関連を分析するほか、自動ブレーキ搭載車に限った「限定免許」の導入可否の検討などを進めている。

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