2019年3月21日(木)

大学スポーツ、脱「密室」 第三者の目でチェック

2018/6/7 1:31
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日本大アメリカンフットボール部を巡る悪質反則問題は、「密室」での指導者と選手の絶対的な上下関係を浮き彫りにした。大学スポーツは学生の自主性に基づく「課外活動」と位置付けられ、大学側のチェックが及びにくいとされる。トラブルや事故を防ぎ、健全な競技環境を整えるためにはどうすればよいか。部や大学を超えた取り組みが始まっている。

筑波大アスレチックデパートメントの活動について、スポーツ部の学生向けにも説明会が開かれた(4月10日、茨城県つくば市)

筑波大アスレチックデパートメントの活動について、スポーツ部の学生向けにも説明会が開かれた(4月10日、茨城県つくば市)

「監督に言いにくいことも活動報告書に書いてもらいます」。5月下旬、茨城県つくば市の筑波大で開かれた大学側と体育会(スポーツ部)の監督3人による定例ミーティング。大学側スタッフがリスク管理の取り組みを話すと、監督側も「今は何かあればすぐパワハラと言われるから」と苦笑しつつ、うなずいた。

スタッフの所属は4月に新設された筑波大アスレチックデパートメント(AD)。大学がスポーツ部を一元管理する国内初の取り組みだ。参加した部にアシスタントトレーナーなどを派遣。大きなけがを防ぐための共通の安全対策を進め、監督の無理な指導がないかも日々の活動報告を通じて把握する。

AD副アスレチックディレクター、山田晋三さん(44)は「第三者的にチェックする人がいない状態は、ある意味でやりたい放題。より安全で健全な大学スポーツをめざしたい」と意気込む。

ADはトラブル防止と学業支援、チームの成績アップが主な目的。金銭トラブルを防ぐための会計管理やユニホームの統一感の確保、地域交流といった幅広い活動も検討している。

スポーツ庁も大学による戦略的な統括・管理を後押ししている。2017年度は、スポーツ振興を担うための特別職「スポーツアドミニストレーター」を設ける大学への補助事業を開始。筑波大のほか早稲田大や青山学院大、日本体育大など8大学が選ばれた。

同庁は19年春には、大学横断的なスポーツの統括組織「日本版NCAA(仮称)」を創設する方針。ライセンス制度の導入で指導者の意識改善などに取り組む予定だ。

明治大の高峰修教授(スポーツ社会学)は「大学スポーツは自主性が重んじられてきたが、日大のように服従を強いる人間関係や内向きな風土に起因する問題が起こるリスクが高い」としたうえで「もっと外部の人材を入れるなど、抜本的な改革が必要」と指摘。日本版NCAAについても「権限を持たせて機能すれば、大学側のガバナンスが効きやすくなる」とみている。

■「指導者を把握していない」54%

スポーツ庁が2~3月、560大学に実施した調査では、大学と直接雇用契約を結んでいないスポーツ部の指導者について、全てまたは一部把握していない大学は54%に上る。部の財務状態は52%が把握しておらず、スポーツ部に対する大学の関与は低い。

一方、強い部ほど大学の広告塔の役割も担っており、関与を強めたい大学も少なくない。日本版NCAAに関し、調査では回答の39%の202大学が加盟の意向を示した。

競技団体側の反応も様々だ。全日本大学野球連盟は「メリット、デメリットが見えない」としてNCAAへの加盟は未定。同連盟幹部は「長年培ってきたガバナンスや資金の仕組みがある。かえって混乱が生じるかもしれない」と心配する。

関東地方のスポーツ部の監督は「日本のスポーツが抱える密閉・隠蔽体質を打破するためにはやるしかない」と、大学の関与が強まることに賛同している。

日本版NCAAとは
 様々な競技を横断して大学スポーツを統括する団体。スポーツ庁が米国のNCAA(全米大学体育協会)を参考に設立をめざしている。大会への医師配置などの安全対策に取り組むほか、大会運営や集客を通じた大学スポーツの振興も担う方針。
 米国のNCAAはアメリカンフットボールで死亡事故が相次いだことを受け、1906年に前身団体が発足。1100超の大学が参加し、バスケットボールの放映権料を中心に収益は年1000億円を超える。

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