2018年7月16日(月)

自転車事故 全国最多の大阪府(もっと関西)
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コラム(地域)
関西
2018/6/7 11:30
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 大阪の街を歩いていると、歩道を猛スピードでかけて歩行者とすれ違っても減速しない自転車によく遭遇する。ほかにも無灯火や雨の日の傘差し、スマートフォンを見ながらのながら運転……。調べてみると全交通事故に占める自転車事故の割合は大阪府は約3割と、全国平均よりも10ポイントほど高い。なぜ大阪は自転車のマナーが悪いのだろうか。

■「固いこと言わん」心に隙?

 キキーッ。大阪市内の長堀通りを歩いていると、記者に50代とおぼしき女性が運転する自転車が襲いかかってきた。緩やかな坂道をふらふらと下ってきた自転車は無灯火で、危険を感じた記者がよけた方向に進路を変えた。もう少しで接触するという場面でブレーキがかかった。あわや事故という事態。しかし、女性の去り際の言葉は「なんでこっちくんねん」。

 大阪市が2017年11月に実施したアンケートによると、市民の自転車運転マナーについて「非常に悪い」、「まあまあ悪い」を合わせた割合が90%に達した。自転車マナーの悪さは市民も十分に自覚している。

 マナーが悪い背景については自転車の保有台数の多さ、平地が多い、通学自転車が多いなど諸説ある。だが、交通心理学を研究し、自身も大阪府枚方市で生まれ育った大阪大学の長山泰久名誉教授は「全国の交通事故の事例を見てきたが、大阪には『そんな固いことを言わんでもええやないか』という精神が根本にある」と指摘する。

 「日常生活でも『なにええかっこしとんねん』と言われる。良くも悪くも『ええかげん』な性格が自転車の運転にも影響しているようだ」(長山氏)

■傘差しや無灯火 絶えず

 例えば、無灯火運転。夜の自転車の無灯火運転は道路交通法で禁じられている。だが、無灯火運転していた大阪市の40歳の男性に聞くと、「ライトを点灯すると自転車ペダルが重くなるし、市内は明るいから自転車のライトは必要ない」と悪びれなく語る。

 雨の日の傘差し運転も法律違反だが、東大阪市の55歳の女性は「傘差し運転が違法とはしらない」と話す。府内の自転車ショップでは、傘を自転車に固定する道具が販売されているのが散見される。

 こうした自転車マナーの意識の低さが積み重なって、大阪府は自転車関連事故は17年で1万1089件と4年連続で都道府県別でワースト1位、負傷者数も1万953人と5年連続でワースト1位という不名誉な記録を持つ。大阪府警の担当者によると、18年1月~4月末までの4カ月間で全交通事故に占める自転車関連事故の割合は31.3%で、全国平均を10ポイント程度上回っていた。

 状況を変えようと大阪府警は自転車マナーの啓発はもちろん、最近特に注力するのが高齢者向けの交通教育だ。自転車事故でヘルメットをつけておらず、頭部を損傷して亡くなる高齢者が著しく多いことから「命を守るヘルメット」と題した約7分間の動画を作成した。自転車事故で祖母を亡くした孫娘の視点からヘルメットの着用を勧める内容で社会福祉協議会などに配布している。

 仮想現実(VR)も活用する。5月の交通安全イベントでは信号無視や一時不停止をした場合にどのような事故が起こるか疑似体験できる機会を設けた。

 大阪市はインバウンド(訪日外国人)が増えている。欧米では自転車は歩行者の安全に配慮して歩道ではなく専用道路や車道を走る場合も多く、自転車マナーの悪さから訪日外国人の間で大阪のイメージダウンにつながりかねない。大阪府警の自転車対策担当管理官の酒本和郎警視は「観光立国として自転車の安全なマナーを広めたい」と話す。

(大阪経済部 黒田弁慶)

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