2019年2月16日(土)

ミャンマーと国連、難民帰還で協力 国軍の領域踏み込むリスクも

2018/6/6 18:00 (2018/6/6 19:47更新)
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【ネピドー=新田裕一】ミャンマー政府は6日、イスラム系少数民族ロヒンギャの難民帰還に向け、2つの国連機関との協力覚書に署名した。治安部隊との衝突が起きたラカイン州北部で、初めて国連職員が活動できるようになる。治安部隊を統括する国軍はこれまで国境地帯への国連の介入を拒んできた。アウン・サン・スー・チー国家顧問は、国軍の領域に踏み込む姿勢を強めており、今後の展開次第では両者間の関係がぎくしゃくするリスクもある。

バングラデシュとの国境地帯のフェンスの先には、ロヒンギャ住民のキャンプが広がる(5月、ラカイン州北部)

帰還したロヒンギャ難民が再定住までの半年間、収容される予定の一時滞在施設(5月、ラカイン州北部)

6日、ネピドーで開かれたミャンマー政府と国連機関の協力覚書の署名式典

ミャンマー政府は6日、各国外交団を首都ネピドーに招き、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連開発計画(UNDP)との覚書の署名式典を開いた。覚書は公開されていないが、国連は「ロヒンギャ難民が以前住んでいた居住地などの状況を独自に調査できる」と説明している。従来隠されてきたロヒンギャの居住地の状況が、国際社会の監視のもとにおかれることになる。もし国軍が立ち入りを拒否すれば、国際社会では対ミャンマー制裁の動きが強まる事態を招く。

スー・チー氏が決断した今回の覚書署名は、国軍との新たな距離感を探る動きの一つだ。従来、ミャンマーの国境地帯では行政分野も含め国軍が大きな権限をもっていた。政権は5月末、ラカイン州北部での人権侵害を調べる独立調査委員会の設置も決めた。国軍の調査では「治安部隊の迫害はない」としてきた。

政権側からは、旧軍事政権が2011年の民政移管を容認する「代償」として成立させた現憲法の改正を求める発言もめだつ。3月に就任したウィン・ミン大統領は、就任演説で憲法改正を優先課題の一つにあげた。

現憲法は、議会の上下両院の25%は国軍最高司令官が選んだ軍人議員に割りあてている。その最高司令官を指名するのは「国防治安評議会」で、軍出身者が過半数をしめる。選挙結果にかかわらず国軍が権力を保てるしくみになっている。

スー・チー氏は、治安分野など国軍が維持してきた領域に踏み込む姿勢を強めている。政権発足から2年がたち、スー・チー氏は「国家顧問」としての権威を確立した。3月の大統領交代や主要閣僚の入れ替えも、大統領の上としての立場が定着したことを映している。

国軍は現憲法の範囲を超えた「民主化」は認めないとの姿勢を崩していない。国境地帯での国連活動容認や改憲論議を文民政権の「不当な干渉」と受けとめ、反発を強めるリスクもある。

スー・チー氏が最優先課題に掲げる少数民族との和平問題では、当事者の国軍の協力が欠かせない。スー・チー政権がすぐに国軍から完全に「自立」するのは難しいが、徐々に関係を修正しようとしている。

ミャンマーが国連機関の受け入れを認めたとしても、バングラデシュに逃れた約70万人のロヒンギャ難民の帰還が実現するかどうかはまだ分からない。難民側の最大の要求はミャンマー国籍の認定にあるためだ。覚書は、帰還の重要なステップである国籍認定手続きにも触れているとみられるが、手続きの迅速化につながるかどうかは不透明だ。

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