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W杯へ香川の覚悟 「選ばれた者として戦う」
サッカー日本代表

2018/6/7 14:30
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ゼーフェルトの練習場を訪れた子どもたちと穏やかな表情で話す香川(手前左)=共同

ゼーフェルトの練習場を訪れた子どもたちと穏やかな表情で話す香川(手前左)=共同

サッカー日本代表がワールドカップ(W杯)ロシア大会へ向けた事前合宿を本格的に始めた3日。ドイツ・ミュンヘンなどから訪れた200人ほどの日本人学校の子どもたちに、にこやかに応じる香川真司(ドルトムント)の姿があった。

晴れ渡る空のもと、山間の保養地でもあるオーストリアのゼーフェルトは空気まで爽やかだ。香川を取り囲む記者との人だかりから笑い声が響く。冗談も交えながら、リラックスした面持ちで香川は質問に応じていく。代表入りは当落線上ではないかと騒がれた10日ほど前の、こちら側まで悲愴(ひそう)な思いへ誘い込むかのような硬い表情は消えている。「背番号10番を背負って、活躍すれば称賛されるわけだけれど、番号でサッカーをやっているわけじゃない。でもその番号に誇りは持っている。より、クリーンになっています。集中していますよ」

何かしてくれるという期待感

香川が欧州で光彩を放っていたころ、日本代表となると精彩を欠く試合もあることに対し、こんなふうに擁護する関係者がいた。「だってドルトムントはポーランド人選手をとってみても、周りがうまいんだから。香川のよさも引き出される。日本代表でそうならないのは、日本選手のレベルが欧州ほどではないということじゃないかな」。欧州で通用する選手になった背番号「10」が、欧州のレベルに達しない自国でパッとしないからと非難を浴びるのは少々アンフェアでもあるよなと、反省させられたものだった。

香川があの4年前と、変わらぬままでいられるわけではない。年齢とともに下り坂を迎えるアスリートの宿命から、この逸材も逃れることはできまい。

今年になって左足首の負傷で2カ月以上のブランクを強いられ、メンバー入りに際してはコンディションが懸念された。壮行試合となる5月末のガーナ戦では後半から45分間の出場。得点という足跡は残していない。それでも独特な加速感があるボールの持ち出し方、周りの選手とはひと味違ったキレといったものを随所にちらつかせてもいた。

「ペナルティーエリアに入ってからの落ち着き、プレー精度の高さ」が香川の真骨頂だとある解説者は話す。相手ゴール付近でのプレー感覚の鋭さともいえるだろう。ガーナ戦でも"あとはフィニッシュだけ"といういいポイントへ忍び込み、決定機を演出している。

5月末のガーナ戦で香川(手前右)は周りの選手とはひと味違ったキレを随所にちらつかせていた

5月末のガーナ戦で香川(手前右)は周りの選手とはひと味違ったキレを随所にちらつかせていた

ゴール前を生息地とするこの背番号「10」は、ボールが自らに渡りにくい試合展開になったとき、前線をフラフラと浮遊するだけに終わりもする。一方でボールが渡りさえすれば、見る者の心をとらえてやまない輝きを放ってきた。2013年コンフェデレーションズ杯イタリア戦の、密集での振り向きざまのボレー。12年、自陣からのロングカウンターで、フランスをサンドニで沈めた痛快な決勝点。消そうにも消えない実績の数々が、ノスタルジックな希望を抱かせる。万全ではないかもしれない。衰えはあるかもしれない。それでもやはり、何かしてくれるのではないか――。

ロシアの地はリベンジの舞台

14年W杯初戦で途中出場し、日本に引導を渡したコートジボワールの英雄を引き合いに出して語った。「あのドログバとまでは言わないけれど、彼が試合に入ったことでチームは生き返った。そういう現実を経験している。若い選手が出てくることに越したことはない。ただ、実績というものは強みであると思う」

ロシアの地はリベンジの舞台。歴史は繰り返され、香川は香川だったとしても、負の面だけが繰り返されるわけではないだろう。「選ばれた者として戦っていく」という香川の語気がいつになく強みを帯びる。

(ゼーフェルト<オーストリア>=岸名章友)

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