2018年8月22日(水)

トルコ総選挙、野党結束で勢い

中東・アフリカ
The Economist
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2018/6/6 2:00
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 トルコのエルドアン大統領と与党・公正発展党(AKP)は、6月24日の大統領選挙と国会総選挙で確実に勝てるはずだった。独裁的指導者であるエルドアン氏は、宗教的保守派の盤石な支持基盤を抱え、大手メディアのほぼ全てを間接的に支配している。さらに、非常事態宣言を敷いていることから、反対派を拘束するなど好きなように権力を行使できるため、誰もが自らの発言に慎重になる状況をつくり出している。

 野党第2党で、少数民族クルド人中心の国民民主主義党(HDP)は事実上、放送電波から消し去られている。同党の大統領候補であり、エルドアン氏に最も批判的な人物の一人であるデミルタシュ氏は、2016年にテロ関連の罪で不当逮捕され、現在は拘置所内から選挙活動を指揮している。

■女性大統領候補、第1回投票で20%獲得か

総選挙を前にインジェ氏(右)率いる共和人民党とアクシェネル氏率いる優良党を含む野党4党が結束、対エルドアン氏で予想外に支持率を伸ばしている=ロイター

総選挙を前にインジェ氏(右)率いる共和人民党とアクシェネル氏率いる優良党を含む野党4党が結束、対エルドアン氏で予想外に支持率を伸ばしている=ロイター

 今回の両選挙は通常より前倒しとなり、初めて同時に実施される。野党は依然として劣勢だが、ここへ来て勢いを増しているようで、有力な候補者を擁立している。最大野党・共和人民党(CHP)の候補者インジェ氏は、人々の心に火をつける人気者で、宗教的な組織票を持たない候補者でありながら、宗教的保守派をも取り込める数少ない政治家だ。保守的な家庭に生まれたインジェ氏は、普段から祈りをささげ、イスラム教徒でスカーフをかぶりたいとする女性公務員の権利は擁護する一方、時折酒をたしなむ人物だという。

 一方、女性で政治家として長年のキャリアを持つナショナリストの元内相のアクシェネル氏は、自分と自ら立ち上げた無名の新党「優良党」を一気に全国的知名度を誇る存在に押し上げた(編集注、同氏は民族主義者行動党=MHP=に属していたが、党内の権力闘争に敗れて同党を追われ、17年に新党を結成、トルコでは「女オオカミ」の愛称で知られる)。優良党は結成から1年もたたないが、国会総選挙では10%を優に超える得票率を獲得しそうだ。最近の世論調査によると、アクシェネル氏は大統領選の第1回投票で最大20%を獲得するとみられている。デミルタシュ氏の支持率も、2ケタ台に達する。弁護士と交流サイト(SNS)を通してしか外界と接触できない政治家にしては、悪くない数字だ。

 エルドアン氏の対立候補らは、大統領自身の選挙戦略を一部手本にしているようだ。

 エルドアン氏率いる中道右派のAKPは今年、右派のMHPと選挙上の連合を組んだ。MHPの党首は長年、エルドアン氏を独裁者呼ばわりしていたが、自党の問題を解消するために方針を転換し、AKPと連携したのだった。トルコの選挙法では、得票率が10%未満の政党は議席獲得が認められないが、MHPはAKPと組むことでこのハードルをクリアした。

 野党は、これと似た手段で対抗している。エルドアン氏が4月に選挙を前倒しで実施すると発表すると、CHPと優良党、「至福党(SP)」、小規模の「民主党(DP)」の4党も連合を結び、どんな弱小政党でも国会に議員を送り込めるよう道筋をつけた。以来、4党の連合は驚くほどの結束力をみせている。優良党が、党大会の開催が遅れたとの理由で出馬を禁じられるという噂が流れた時、CHPは自党の議員数人を“貸し出す”という策に出た(国会議員を20人以上抱える政党は、例外なく選挙に参加できるからだ)。また、主要野党のCHPと優良党の2党は、第1回投票でエルドアン氏の勝利が確定しなかった場合、第2回投票で互いの大統領候補を支持すると約束している。

 野党連合はHDPとは距離をとり、連合への参加を呼びかけなかった。大半のトルコ国民は、HDPをトルコ内の非合法武装組織であるクルド労働者党(PKK)のフロント組織だと考えている。ただ、全く歩み寄りをみせていないわけではなく、野党の大統領候補4人全員が、選挙前のデミルタシュ氏の解放を求めている。だが、裁判所も政府もこの要求を無視している。

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