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中東の覇権争い収束遠く、サウジ・カタール断交1年

イランとの覇権争いの様相に

【イスタンブール=佐野彰洋】サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など湾岸・アラブ4カ国がカタールとの国交断絶を表明してから5日で1年を迎える。イランの支援を受けるカタールは経済封鎖下での経済運営に自信を深め、5月下旬には対抗措置として4カ国で製造された商品の禁輸と販売禁止を発表した。断交の背景にあるサウジとイランの覇権争いに収束の兆しはなく、カタール情勢が改善する見通しは立たない。

「カタールはサウジをひざまずかせた」。中東メディアによるとイランのザリフ外相は5月上旬にテヘランで講演し、人口約270万人の小国カタールを屈服させられずにいるサウジを強烈に皮肉った。

カタールはサウジと同じイスラム教スンニ派で、1979年のイラン革命や80年に始まったイランイラク戦争を受けて発足した湾岸協力会議(GCC)の一員でもある。

しかし、サウジなど4カ国は2017年6月5日、カタールによる「テロ組織支援やイランとの親密な関係」を理由に断交を表明した。国境や空域を封鎖し、人や食料・物資の往来も制限した。

背景にあったのが、カタールの独自外交だ。エジプトやパレスチナ自治区ガザのイスラム原理主義組織を支援したり、衛星テレビ局アルジャズィーラを通じて自国を除くアラブの君主制や強権体制を批判したりしてきたことが、サウジ王室の怒りを買っていた。

経済面の事情もある。世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出国であるカタールの国富の源である沖合の「ノースフィールドガス田」は海底でイラン沖合の「南パルスガス田」とつながっている。

カタールにとって、日々の生産・輸出や将来の増産を円滑に進めるには、シーア派の大国であるイランと良好な関係を維持することが不可欠だ。このため、サウジ主導の対イラン強硬路線と距離を置いてきた。

カタールは食料輸入の大半をサウジとUAEに依存していたが、断交後には輸入先をトルコなどに切り替え、野菜や乳製品の自給増にも乗り出し、市民生活への悪影響を抑えることに成功した。自信を深めたカタール政府は5月26日、サウジなど4カ国で製造された商品の販売禁止を小売店に指示した。

一方、サウジ側が振り上げた拳を下ろす気配はみられない。仏紙ルモンドは1日、カタールがロシアの最新鋭地対空ミサイルシステム「S400」を導入すれば「軍事行動を含むすべての必要な措置」を講じると記した書簡をサルマン・サウジ国王がマクロン仏大統領に送っていたと報じた。

サウジとイランによる中東の覇権争いの舞台はカタールだけではない。イランはイラク、シリア、レバノン各国の政権に対する影響力を高めている。サウジは15年にイエメンに軍事介入を開始。サウジが支援する暫定政権とイランが支えるシーア武装勢力間の内戦が続く。

5月8日、トランプ米大統領はイラン核合意からの離脱と対イラン経済制裁の再開を表明した。イラン弱体化で米サウジと利害を共にするイスラエルはシリア領内のイランの軍事施設に大規模な空爆を加えた。中東の軍事的緊張は1年前よりもはるかに高まっている。

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