2018年10月23日(火)

人懐こさで世界泳ぐ 近大水上競技部監督 山本貴司さん(もっと関西)
私のかんさい

コラム(地域)
2018/6/5 11:30
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■近畿大水上競技部監督の山本貴司さん(39)が生まれ育ったのは大阪市住之江区。近所に商店街のある活気あふれる町だった。3歳半で自宅の前にあったイトマンスイミングスクールに入った。

 やまもと・たかし 1978年大阪市生まれ。近畿大卒。96年から3大会連続で五輪出場。2004年アテネでは200メートルバタフライ銀、400メートルメドレーリレー銅と2つのメダルを獲得。08年に現役引退。13年11月、近畿大水上競技部監督に就任。

やまもと・たかし 1978年大阪市生まれ。近畿大卒。96年から3大会連続で五輪出場。2004年アテネでは200メートルバタフライ銀、400メートルメドレーリレー銅と2つのメダルを獲得。08年に現役引退。13年11月、近畿大水上競技部監督に就任。

水泳を始めたのはたまたま。僕は一人っ子で、幼稚園に入る前に集団生活に慣れさせようと親が考えた。家の向かいにイトマンスイミングがあり、送り迎えもいらずちょうどよかった。

小さい頃から負けず嫌いで、競争と名のつくものはとにかく勝ちたかった。スイミングでも隣の友達より早くゴールしては「ヨッシャー」とか言っていた。

近所の子とは外で野球やサッカーをして遊んだ。町中のせいか人がわさわさと多く、みんな負けん気が強かった。野球でも「ピッチャーやらせろ」とケンカになる。周りに認めてもらうために、突き抜けたものを持とうと必死だった。

■現役時代は海外での合宿や大会も多かったが、日本の拠点はずっと関西に置く。世界を舞台に活躍できた要因は、マイペースで物おじしない関西人気質にあると自己分析する。

阪神ファンで、小学生の頃は特にバース選手が好きだった。たまに甲子園球場に行って、外野席で騒いで「すごい世界やな」と思った。一体感があって、みんな友達みたいにあっちこっちから話しかけられて。こういうところで育つから人との間に壁をつくらず、海外で活躍できる関西出身の人が多いのかもしれない。

物おじしないというか、人懐っこさがプラスに働いている気がする。それが言葉の壁を越えるのではないか。異なる環境や文化にも自分から飛び込める。恥ずかしさもあまり感じず、そのままの自分でつきあってもらおうと思える。普段通りの自分でいられる冷静さを保ち、マイペースに色々なことを進めていける。

国際大会で自分のペースを守って結果を出せたのは自分にもそういう気質があるから。小学6年で人生初の海外遠征でオーストラリアへ。当初は緊張して黙っていたが、向こうの子と仲良くなろうとスティービー・ワンダーをものまねして歌ったら一気に打ち解けた。そういう原体験もある。

アテネ五輪では200メートルバタフライで銀メダルを獲得した(2004年)

アテネ五輪では200メートルバタフライで銀メダルを獲得した(2004年)

■2004年のアテネ五輪では競泳日本代表のキャプテンを務め、メダル8個を獲得したチームを盛り上げた。今は母校の近畿大で選手育成に取り組む。

コミュニケーション力は近所の商店街でも鍛えられた。「あれが欲しいんやけど、なんぼ?」と小さい子が普通に大人に聞いて、お店の人も「きょうは何買いにきたん?」と気さくに話してくれる。僕も成長してからは、もぞもぞしている子に「どうしたんや?」と自然に声をかけていた。

アテネの競泳代表は仲がよかった。水泳以外でも一緒に過ごす時間は多いから一枚岩というか、スタンドでの応援も一生懸命。僕は関西人気質というか、練習でもチームのキャプテンでも楽しんでやった。その楽しそうなところに人が集まってくれたのだと思う。

今は近大監督として約70人の学生を預かっている。部のスローガンは「勝たな、おもろない!」。イトマンのコーチに何度も言われた言葉だ。遊びたいのも我慢して、きつい練習に耐えて、試合で負けたら面白くない。だから勝つためにやるべきことをやり、結果を出すことにこだわってきた。

大学の入試広報課の仕事でも「勝たな、おもろない!」の精神で、大学説明会の満足度を上げるために皆で頑張った。その延長線上に志願者数日本一という今の状況があるのだと思う。

経済でも人口でも、なんでもかんでも東京に集中しているのはよくない。当然、東京の強豪校に肩を並べ、勝ちたい気持ちでやっているが、大事なのは4年間でどれだけ心と頭を成長させられるか。2年後の東京五輪は大きな目標だが、(出場権は)選手が自分で望み、つかむもので、指導者はその手助けをするもの。どんな小さな変化でも成長の芽が見えればうれしい。

(聞き手は大阪・運動担当 影井幹夫)

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