次世代通信規格「5G」や人工知能(AI)などの革新技術について議論する「世界デジタルサミット2018」(日本経済新聞社・総務省主催)が4日、開幕した。5G時代にはデータが大量に飛び交うことを前提としたビジネスが生まれ、データ処理で力を発揮するAIの重要性も増す。今後、利用する側の知識や法整備を拡充すべきだとの指摘が相次いだ。
NTTドコモの吉沢和弘社長は「5G時代には様々な企業とのビジネスやサービスの協創が重要」と述べた。ドコモは1月から技術仕様や意見交換の場を提供する「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」を開始。1400超の企業などが参加し、大量のデータを必要とするビジネスが広がる可能性を指摘した。
データの流通量は加速度的に増え、その際にカギを握るAIについて、思考判断の経緯や理由が分かる「ホワイトボックス型AI」を打ち出したのはNECの新野隆社長。「経営判断などにおいてはなぜそうなったかを説明することが必要」として、自社のマーケティングやアサヒビールの需要予測などに活用されていることを紹介した。
富士通の田中達也社長は、「課題はデータを処理するコンピューター側の限界」とし、コンピューターの性能を高めることが必要との認識を示した。同社が5月から商用化した「デジタルアニーラ」は、交通経路の最適化による渋滞解消などにつながると指摘した。
移動通信の業界団体、GSMAのマッツ・グランリド事務局長はモバイルが世界経済の成長を促すとし「デジタル時代に見合った規制環境が必要。次世代のネットワークのインフラを容易にする政策、平等な競争環境、適切なプライバシー、データ保護のルールが求められる」と指摘した。
米クアルコム幹部やノキア日本法人トップらによるパネル討論では、個人情報やデータの取り扱い方も話題となった。欧州で始まった「一般データ保護規則(GDPR)」について、ソラコムの玉川憲社長は「世界進出を目指すスタートアップは同規則への対応で組織としても洗練される」と前向きに捉えていた。