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トランプ政権、低所得者向け食料補助2割削減へ

10年間で14兆円、小売り業績に打撃懸念

【ニューヨーク=平野麻理子】トランプ米政権と与党・共和党は低所得者向けの公的な食料配給券(フードスタンプ)予算を大幅に削減する方針だ。予算を現在の水準から2割減らし、10年間で1300億ドル(約14兆円)削減する。野党・民主党からは「弱者切り捨て」との強い反対が出ているほか、フードスタンプの受給者が利用する小売企業も業績に打撃を受ける可能性がある。

フードスタンプの予算が盛り込まれた農業法案(Farm Bill)は5月18日に一度採決をとったが、移民政策を巡る対立から米下院の共和党保守強硬派が反対に回り、否決された。共和党は現行法が失効する9月末までに新たな農業法案の可決を目指す。

新法案では、妊娠中の人や障害者などの特例を除き、フードスタンプの受給にパートタイムでの労働か週20時間の職業訓練を義務づける。子供のいない人が3カ月以内に職を見つけられなければ、支給を打ち切る。州による職業訓練を補助する予算は積み増すが、全体では年130億ドル程度の予算圧縮を目指す。

フードスタンプの受給者は約4200万人。米議会の中立機関である米議会予算局(CBO)は、新法が成立すれば今後10年間で100万人程度が受給資格を失うと推定する。共和党側は職業訓練制度の拡充は低スキル労働者の経済力底上げにつながるとみるが、民主党は「弱者切り捨て」だと反発している。

フードスタンプ予算の削減は、実際にスタンプが使われるスーパーやコンビニエンスストアにとっても看過できない事態だ。米農務省によると、年間予算の約半分にあたる330億ドルがウォルマートやターゲットのような大手小売りチェーンで利用されているという。

トランプ大統領は就労規定の厳格化による予算圧縮だけでなく、食料品の現物支給もかねて提唱している。これまで受給者は商品券を受け取り、好きな食料を店頭で選ぶことができたが、半分をシリアルや缶詰などの直接支給に切り替える案だ。実現すれば小売業には追い打ちとなる。

米食品スーパー大手クローガーのマイク・スコルトマン最高財務責任者(CFO)は3月、毎月のフードスタンプ支給直後は「お店に人が増える」と認めた。同社は、強固な食料支援プログラムの継続を議会に働きかけていくという。

地域の小さな商店はただでさえネット通販の台頭で弱体化しており、死活問題になりかねない。ペンシルベニア州食品小売協会のアレックス・バロガ会長は「地域によっては30~40%の客がフードスタンプを利用する場合もあり、影響は計り知れない」と語る。

低所得者市場はアマゾン・ドット・コムの侵略も目立つ。アマゾンは2017年に、低所得者に限り有料会員の会費を約半分に引き下げた。クレジットカードを持てない人が多い低所得者層はネット通販が難しかったが、コンビニなどでアカウントに現金を入金できるサービスを開始。さらに米農務省と協力してアマゾン上でフードスタンプを使える仕組みも開発中だ。

フードスタンプの受給者は08年の金融危機を経て急増した。足元では景気回復に伴ってやや減少しつつあるが、00年と比べると2.5倍の水準にある。乱暴な予算削減や制度変更は社会に混乱をもたらすおそれがあるが、技術の進歩やグローバル化で置いてきぼりになった低所得者のスキル底上げは米経済の成長にとっても欠かせない。

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