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ヤ軍・田中と松井秀喜氏に共通するメンタリティー

スポーツライター 杉浦大介

米大リーグ、ヤンキースの田中将大が勝ち星を重ねている。6月2日(日本時間3日)のオリオールズ戦に先発し、5回1/3を4失点で自身5連勝、7勝目(2敗)を挙げた。4点台後半の防御率が示す通り絶好調とはいえないが、目立つのは大谷翔平との対戦が地元ニューヨークでも大きな話題になったエンゼルス戦での2勝。2017年のプレーオフから引き続き、注目される舞台での勝負強さを印象付けている。田中の"大舞台"での強さはどこからくるのか。

4月に自責点5以上が2試合あったこともあり、今季の防御率4.79はいいとはいえない。田中も満足はしていないだろう。それでもこれまでのところ、全体的な印象は悪くない。注目度が高かったエンゼルスとの2試合では目の覚めるような内容でファンを魅了したからだ。

4月28日のアナハイムでの試合では6回を2安打1失点で9奪三振。5月27日のホームでの試合でも6回3安打1失点で8奪三振。特に同27日に実現した大谷との直接対決で2三振を奪い、先輩の貫禄をみせつけた。

大舞台で際立つ勝負強さ

「(大谷と田中の)勝負を見るのは楽しかった。大きな期待を集めていた対決だったから、見られたのは素晴らしかった」

ヤンキースのアーロン・ブーン監督のそんな言葉は、日本人対決に対する周囲の期待が大きかったことを物語る。前半戦の1試合にすぎないこの試合を「ビッグゲーム」と呼ぶのは大げさだが、注目度の高い「ビッグステージ」ではあった。その舞台で今季最高レベルともいえる投球を続けたことで、田中の勝負強さが改めて際立ってみえた。

「(大舞台に強いとは)自分では思ってない。開幕投手としても結果を残せていない。今までキャリアの中で1回も勝っていないわけだから」

田中本人がそう語る通り、実際に過去3度登板した大リーグ開幕戦で白星はなく、15年のワイルドカード戦では敗戦投手になるなど、大舞台で常に完璧な投球を続けてきたわけではない。ただ、そのプレーオフ初登板にしても5回で2失点と内容が悪かったわけではなく、昨季以降は注目されるゲームで何度も素晴らしい投球をみせてきた。

17年は調子の波が激しいシーズンを過ごしたが、ダルビッシュ有との投げ合いとなった6月23日のレンジャーズ戦では8回を3安打無失点で9奪三振と快投した。さらにインディアンス、アストロズという強力打線と対戦したプレーオフでは3試合で防御率0.90(20回投げて2失点、18奪三振)というしびれるような投球で、内容次第では辛辣になりやすい地元ファンを歓喜させた。

ポストシーズン中に、米サイトのスポーティングニュースが日本時代にまで遡った田中の大舞台での強さを掘り下げた特集記事を掲載したほど。そんなエピソードに代表されるように、田中は「ビッグゲーム・ピッチャー」という印象を抱いている地元ファンは多いはずだ。

「ビッグステージでの彼は普段よりエネルギーに満ちている。そうした選手はいるものだ。腕の振りがよくなるし、投球がアグレッシブになる。投球フォームにもいつも以上に躍動感があるように思える」

ヤンキースのラリー・ロスチャイルド投手コーチもそう語り、背番号「19」は注目される試合に強いことを認めていた。メジャーでの田中を誰よりもよく知るベテランコーチは「いつもそんなふうに投げてくれたらとも思うが、人間とはそういうものだからね」と付け加えていたが、特にニューヨークのような場所ではこうした勝負強さは大きな意味を持ってくる。

重要な舞台でも動じぬ精神

注目される試合では当然のようにプレッシャーも厳しくなる。それでもなぜ、田中は実力を発揮できるのか。日本でも高校野球、プロ野球で多くの重要な試合を経験し、場数を踏んできたことは少なからず影響しているのかもしれない。同時に、もともと持っていたのか、キャリアの中で培われたのか、重要な舞台でも動じないメンタリティーを備えているのが大きいのだろう。

「全米各地を回っても、ニューヨークでプレーする大変さは感じる。ファンの方々もシビアで、遠征にいってもニューヨークのメディアの数の方が多いくらい。もともと注目のされ方が違う。ただ、僕は今まで名門、歴史のあるチームでやってきたことがなかったので、そういう場所に身を置いてみたいと望んでここにきた。今までとは違うところで、もっと成長できたらと思っていました」

田中本人の言葉からは、ニューヨークでプレーすることの難しさ、やりがい、そして喜びが伝わってくる。誰でもそれと同様なコメントを残すが、実際にその心構えで臨める選手は多くはない。大舞台で躍動感が生まれるのは、こうしたステージが本当に望んでいた場所だからこそ。田中が注目されるマウンドでは水を得た魚のように好投できるのは、こうした考え方からではないか。

「自分と関係ない部分の雑音は、ニューヨークならでは。結果が出なかったら(あれこれ)言われても、何を書かれても当然だと思う。そういう部分は自分がコントロールできないからどうしようもないと僕は思っていた。(田中も)それができているんじゃないですか」

09年まで7年にわたってヤンキースでプレーした松井秀喜氏のそんなコメントも響いてくる。近年は多くの日本人大リーガーが躍動するようになったが、ヤンキースで4年以上を過ごしたのは松井氏と田中だけ。この大都会で長くプレーするために、プレッシャーへの強さは必要に違いない。逆にいえば、そんなたくましいメンタリティーを備えているからこそ、2人はニューヨークで長いキャリアを築いてこれたのだろう。

今季、快調に勝ち続けるヤンキースの中で背番号「19」から目が離せない。昨季に続き、2年連続でプレーオフに進出する可能性は十分ある。そうしたチームで大舞台に動じないハートを持った田中の存在は心強く思えてくるのだ。

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