2019年6月24日(月)

陶磁器の古都 世界に挑む(熱撮西風)

2018/6/6 2:00
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西日本の陶磁器産地が海外への進出に手応えを感じ始めた。台所や食卓用の陶磁器はバブル期の1990年に比べ、生産量でほぼ9分の1に縮小した。そのなかで有田や信楽など伝統のブランドが和食器の枠を越えた新たな商品展開で挑戦を続けている。

90年代半ばには300軒以上の陶磁器の店がならんだ佐賀県有田町。今では店も半減し、売り上げはピーク時の6分の1ほどに落ち込んだ。そんななか、磁器を扱う商社のキハラは縮小する国内市場に危機感を抱き、約20年前から欧州や中国の見本市に積極的に参加してきた。世界に向けたヒット商品を生み出せずに試行錯誤が続いたが、2012年にシンガポールで開かれた見本市が転機となった。現地でアート小物や工芸品を扱う「スーパーママ」と共同で企画した飾り皿がヒット商品となり、5年間で1万枚以上を出荷した。

台湾やイギリス、オーストラリアなど世界各国のデザイナーらと共同開発した皿やコーヒーカップ

台湾やイギリス、オーストラリアなど世界各国のデザイナーらと共同開発した皿やコーヒーカップ

営業統括マネージャーの松本幸治さんは「現地デザイナーが用途や販売ルートまで考えた。我々が考えるよりも現地にフィットしたようだ」と話す。これまでに台湾やカナダなど計7カ国、10社と共同開発してきた。

シンガポールのデザイナーによるエスニックな柄を絵付けする(長崎県波佐見町)

シンガポールのデザイナーによるエスニックな柄を絵付けする(長崎県波佐見町)

商談に訪れたフランス人起業家。キャンドルを入れる器を探すため、ショールームを熱心に見て回った(佐賀県有田町)

商談に訪れたフランス人起業家。キャンドルを入れる器を探すため、ショールームを熱心に見て回った(佐賀県有田町)

同じくバブル期以降に販売の低迷が続いた滋賀県の信楽でも従来の食器、置物などとは別の商品で市場を狙う。

滋賀県甲賀市の丸元製陶が製造する信楽焼の陶器風呂が好評だ。訪日外国人の増加や2020年の東京五輪を見据えたホテルの新改築ラッシュの波に乗った形だ。年に800個ほどをホテルや旅館に納める。型・色・サイズは全てオーダーメードで一つ一つ手作業で作る。陶器風呂は冷めにくく、掃除の手間も少ないという。「五輪特需や観光客増加はいつまで続くのか分からない。陶器風呂では取り換え需要も見込みにくい」(同社の村木郁夫社長)。現在は中国の富裕層をターゲットに、香港での営業活動に力を入れる。

古くから続く陶磁器の里では、新たな市場へと活路を開く、次の一手の模索が続く。

信楽焼の陶器風呂。価格は一つ34万6千円から(滋賀県甲賀市)

信楽焼の陶器風呂。価格は一つ34万6千円から(滋賀県甲賀市)

(西部編集部 塩山賢、大阪写真部 山本博文)

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