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老舗ホテルへ遠足計画 子供のやる気引き出す教諭

2016年2月、帝国ホテル(東京・千代田)で国内外の観光客に交じって38人の子供たちの姿があった。最上階のバイキングレストランでローストビーフを堪能し、帰りは米国製の高級外車「リンカーン」などに分乗。老舗高級ホテルに大勢の子供という取り合わせが周囲の目を引いた。

子供たちは東京学芸大付属世田谷小の6年1組。当時の担任、沼田晶弘教諭(42)が掲げた「プロジェクト」の一環だ。子供たちが目標を考え、計画を練って実行を目指す取り組みで、このクラスが掲げたのは「卒業遠足で帝国ホテルの食事とリムジン」。一見荒唐無稽でも、絵画や作文のコンクールを探しては作品を出して資金集めをするなどクラスで工夫を重ね、実現にこぎ着けた。

沼田さんは「児童の努力の結果。僕は何もしていない」とたたえ、「成功体験をしたことで自分に誇りを持ってほしい」と話す。

子供たちのやる気を引き出す手法は、学校現場が取り入れだした「アクティブラーニング(能動的な学習)」の先行事例として、教育界にとどまらず企業関係者も注目。"カリスマ教師"として講演に全国を飛び回る。

最初から教師になろうとは思っていなかった。「勉強は嫌いだったし子供も苦手だった」。教員免許があればつぶしがきくと思い東京学芸大教育学部へ進んだ。高い志があったわけではない。

米大学院への留学後、中学生相手の受験塾の講師をしていたところを大学時代の恩師に声をかけられ、同小の補助教員に。子供たちとやりとりする毎日に「おしゃべりするのが得意で、合っているかも」と教師への道を踏み出した。

教師の「理想像」がなかったからこそ、前例にとらわれない。楽しく取り組めるようにアップテンポな音楽でダンスを織り交ぜた掃除をしたり、授業の先生役を児童に任せる仕組みをつくったり。ユニークさが目を引くが、子供が自らやる気になる仕組みづくりが重要という。「教師の役目は子供のやる気を引き出し、ゴールへ導くだけ」

時に型破りな手法に批判も少なくないが、「評価をするのは児童たちだから」と意に介さない。

では、児童たちが作った沼田さんの「通信簿」をのぞいてみよう。「目つきが怖い」「もっとみんなの言い分を聞いた方がいい」と遠慮がない。昨年度に担任をした5年生の女子児童は「ぬまっちは、変な先生だよ」とあだ名を使って友達のように話す。「でもねぇ、ぬまっちのクラスはすっごく楽しいんだよ」

文  筒井恒

写真 伊藤航

 ■赤万年筆 学校でも出張先でも常に携帯する愛用の1本。クラス全員との毎日の交換日記に使っている。スケジュールがびっしりと詰まった1日で時間を見つけて30人以上の児童に赤万年筆でコメントを書いて返す。
 1人に費やせるのは1~2分。「だからこそ気持ちを込められるように使っている。適当な赤ペンで書きたくないんです」と重用する。ただ、返事のコメントが万年筆であることを「子供たちは気づいてないかもしれないですね」。

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