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放射線検査、線量記録や研修義務化へ 患者安全を強化

医療機関での患者の過剰な医療被曝(ひばく)を防ぐため、厚生労働省は線量の記録や医療従事者向けの研修などを義務付け、放射線を使った診療の安全対策を強化する。被曝線量が高くなると発がんや不妊、視覚障害などのリスクが指摘されているが、線量の限度など法令上の明確な規制がない。同省は今後省令を改定し、新たな規則を盛り込む方針。

コンピューター断層撮影装置(CT)や血管造影など比較的被曝線量が高い検査では線量記録を医療機関に義務付け、患者にも情報提供できるような仕組みをつくる。患者の被曝を最小限に抑えるため、放射線を使った検査の身体的な影響などについて医療従事者向けの研修も実施する方針。

また、医療機関によって検査ごとに使用される線量にばらつきがあることから、被曝線量が極端に高くなることを防ぐ目安としての数値を新たに導入する。検査によるが、例えばCTでは医療機関によって線量に10倍程度の差があるという。

学会などでつくる「医療被ばく研究情報ネットワーク」が2015年に全国の医療機関約300カ所からの回答を集計。検査別に使用線量を高い順に並べ、全体の75%にあたる数値を「診断参考レベル」と呼ばれる目安とした。厚労省は、原則としてこの目安に基づいた放射線検査を求める考え。

放射線を使った診療は治療やがんの早期発見に役立っている一方、過剰な医療被曝は発がんや視覚障害など身体的な影響が指摘されている。医療従事者などは年間被曝量の規定があるが、患者には線量の限度や被曝線量の記録などについて法令上の明確な規定はなく、健康影響についてもよく分かっていない。

ただ、CTは年間推計で約3千万件実施されており、増加傾向。日本学術会議によると、日本人1人当たりの年間平均被曝量約6ミリシーベルトのうち約3.9ミリシーベルトは医療被曝で、国際的にも高い水準という。特にCTによる被曝が多く、日本学術会議は昨夏、政府に対して医療被曝の実態把握や規制を求める提言をまとめていた。

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