韓国の光州市、自動車の受託生産工場 現代自と協力
【ソウル=山田健一】韓国南西部の中核都市、光州市は1日、現代自動車の協力を得て、完成車の受託生産工場を新設する構想を発表した。同市が主体となり工場の運営法人を設立、2020年にも稼働させる。投資額は7000億ウォン(約700億円)規模になるもよう。市は車の受託生産を地方の産業振興のモデルにしたい考えだ。
消費財の受託生産モデルは、スマートフォン(スマホ)など電子機器では広く浸透しているが、完成車メーカーを頂点とした系列の文化が残る自動車業界では珍しい。光州市は高コスト体質による空洞化が指摘される韓国の車生産に注目。電子機器の生産モデルを転用し、地元経済の活性化と新規雇用の創出を狙う。
光州市によると、現代自が工場建設に参加するとの意向書を提出した。ほかの自動車関連企業からも出資を募り、市南部の工業団地に推定で年産10万台の完成車工場を建設する。現代自は「経営には関与しない」としており、運営法人は市が最大株主になる見通しだ。
現代自は1日、「生産する車種や事業の採算性を精査し、投資規模を決める」とのコメントを発表した。韓国紙・文化日報(電子版)は市幹部の話として「投資額は7000億ウォン以上、稼働は2年後になる」と伝えた。
一方、別の韓国紙は「新工場の従業員の年収は4000万ウォン程度」と報じた。現代自の平均給与(年9200万ウォン)の半分以下に抑える形。現代自は毎年、労働組合の賃上げ要求に悩まされている。新工場への参画表明で、労組をけん制する思惑も透ける。
韓国の自動車生産は11年の465万台をピークに減少傾向にある。光州市の構想には、1998年以来となる完成車工場の建設だとして期待が集まる一方、品質保証に責任が持てるのかなど問題点を指摘する声もある。車を一貫生産する純粋な完成車工場にするのか、既存のサプライチェーン(供給網)から部品を調達し、組み立てることを主体の工場にするのかといった詳細も不明だ。