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イタリアより深刻な日本(大機小機)

イタリアの国債利回りが急上昇した。欧州連合(EU)懐疑派の極右・ポピュリズム(大衆迎合主義)政権の誕生による財政拡張への懸念からだ。このままでは債務危機が再燃しかねない。だが、そのイタリアより財政がずっと深刻なのが日本である。

安倍政権は借金や利払いを除外する基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標を2020年度から25年度に先送りした。一方のイタリアは、基礎的収支の黒字を維持している。財政収支の赤字も国内総生産(GDP)比で1.9%とユーロ基準(3%以内)を満たす。長期債務残高のGDP比は131%とユーロ圏ではギリシャに次ぐ高水準だが、日本の236%とは比べようがない。

基礎的収支の黒字化は本来、短期目標である。プライマリーとは基礎的というより初歩的という意味で、跳び箱でいえば3段くらいだ。ユーロ圏の主要国などが財政収支の黒字化を目指して7段の跳び箱を跳んでいるときに、日本は20年以上も、3段の跳び箱の前でためらい続けている。

その目標を5年も先送りするのには驚く。21年度の中間目標も大甘だ。日本が仮に欧州の国であってもユーロには加盟できない。

経済大国である日本がなぜこんなことになったのか。少子高齢化が進行中なのに、消費増税を先送りしてきたうえに、社会保障制度にもメスを入れなかった。来秋の消費増税には、経済対策で備える手厚さだ。東アジアの緊張で、防衛費のGDP比1%原則も外されかねない。

黒田東彦日銀総裁はそんな財政危機に警告するどころか、膨らむ財政赤字を事実上の財政ファイナンスで支えている。出口戦略を先送りすれば金利急騰など潜在的リスクが累積する。

何より与野党とも政治家の危機感が乏しすぎる。悪性インフレによる債務帳消しをもくろんでいるのか。財務官僚にいたっては財政再建どころか、首相の顔色をうかがって公文書改ざんなど大罪を犯している。

財政規律を失わせた安倍政権の責任は重大である。長期政権に求められる不人気の改革を避けてきた。財政ポピュリズムのツケは必ず将来世代に回る。政治混乱のなかで、大統領や中央銀行総裁が危機感を持って警告するイタリアが、まだ健全にみえる。(無垢)

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