2018年12月12日(水)

司法取引がスタート 経済犯罪を想定、対応急ぐ企業

2018/5/31 20:27
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他人の犯罪を明かす見返りに、容疑者や被告の刑事処分を軽くする日本版「司法取引」が6月1日から導入される。贈収賄や脱税、談合、粉飾決算などの経済犯罪が対象となるため、企業側の関心は高い。組織犯罪などの解明に新たな武器となる一方で、虚偽の供述による冤罪(えんざい)のリスクもあり、当面は慎重な運用となりそうだ。

5月に東京都内で開かれた、司法取引のコンサルティングを手掛けるKPMGコンサルティング(東京)主催のセミナー。参加者は定員100人を超え、土木、建設、IT(情報技術)、製造業など幅広い業種の法務担当者が参加した。水戸貴之シニアマネジャーは「企業からの相談は施行が近づくにつれ増えている」と明かす。不正事案を想定したシミュレーションの検討や危機対応・調査マニュアルを作成する企業もあるという。

宅配便最大手のヤマトホールディングスも、社外でのセミナーにも法務など関係部門の担当者が参加するなど情報収集を進めている。

企業側の関心が高い背景には、詐欺や薬物などの組織犯罪に加え、贈収賄や脱税、談合、粉飾決算など幅広い企業犯罪が司法取引の対象になったことがある。米国のように自白と引き換えに罪を軽減させる「自己負罪型」は認めておらず、他人の事件捜査へ協力する代わりに罪を減免させる「捜査公判協力型」のみ採用したのが特徴だ。

「粉飾決算は取締役からの指示でした」。ある上場企業の経理担当部長が検察官に重い口を開いた。検察側は部長の起訴を見送る一方、部長の供述に基づき取締役を起訴した――。司法取引はこうした捜査が可能になる。

▽価格カルテルに関わった同業他社の役員の犯罪について証言する代わりに起訴を見送る▽脱税事件での求刑を軽減し、脱税資金を政治家への賄賂に充てていたことを証言させる――などが企業犯罪として具体的に想定される。

社内や取引先などで違法行為があった場合、企業は事実関係を把握して、司法取引に応じるべきかなどを判断する必要がある。司法取引を持ちかけられた場合、どう把握し対応するかも課題だ。

もっとも、実際の運用はハードルが高そうだ。最大の理由は、罪から逃れたい一心で虚偽供述で他人を無実の罪に陥れる恐れがあるためだ。検察当局は司法取引で得られる供述に、裏付け証拠が十分にあるかを吟味した上で応じるかを判断することを捜査現場に求めている。当面は経済事犯を中心に検討するという。

司法取引で証拠や供述を得にくい犯罪の解明に役立つことが期待される一方で、「安易に利用すると司法取引なしで供述を得にくくなる」(検察幹部)などの弊害を懸念する声もある。大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を契機に導入が決まった経緯もある。捜査手法が変わる刑事司法の転換点だけに、適正運用が定着のカギを握りそうだ。

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