2018年6月18日(月)

シェア経済の波、企業の遊休資産に 印刷のラクスル上場
スタートアップ続々

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2018/5/31 19:00
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 企業の持つ空いた設備をシェア(共有)して稼ぐビジネスが広がってきた。31日、中小の印刷工場の稼働していない時間を使ったサービスで急成長したラクスルが東証マザーズに上場した。IT(情報技術)を駆使し、生産ラインや会議室などを一時的に貸し出すスタートアップも相次ぎ生まれている。設備の有効活用を通じた企業の生産性向上にもつながりそうだ。

 「日本の伝統的な産業を変えていきたい」。ラクスルの松本恭摂社長は上場後の記者会見でこう語った。

 公開価格を約10%上回る1645円の初値が付き、1999円で取引を終えた。上場初日の時価総額は550億円。今年マザーズに上場した企業としては、業務自動化ソフトのRPAホールディングス、人工知能(AI)開発のHEROZ(ヒーローズ)に次ぐ規模だ。海外の投資家から「中小企業の顧客を積み上げるビジネスモデルが評価された」(ラクスル)という。

 ラクスルは全国の数十社の中小の印刷工場の不稼働時間を活用する。名刺やチラシなど顧客からの小口の注文を集約し、最適な工場に発注する。ネットで注文でき価格も一般的なサービスより4割程度安いことから中小企業の利用が多い。印刷事業の売上高は2018年7月期に前期比35%増の101億円を見込む。

 印刷業界は約3万社の中小企業が存在するが、工場の稼働率は4割程度にとどまる。ラクスルの松本社長は経営コンサルタント時代、顧客企業の印刷費用が高い原因を調べる過程で印刷業界の遊休設備の多さに着目。「ネットを使って有効活用すれば割安なサービスを提供できる」と考え09年に起業した。

 稼働率が高まれば印刷会社の経営安定につながる。のぼりの印刷を手がけるイタミアート(岡山市)はラクスルと提携後、新設備を導入して冊子などにも品目を拡大している。「リスクを抑えながら収益をアップできた」と喜ぶ。

 ライドシェアや民泊など、これまでのシェアビジネスはCtoC(個人間取引)が中心だった。ラクスルが確立した企業の空き設備を活用するモデルは、他の分野にも広がっている。

 シタテル(熊本市)は全国の450社の縫製工場・生地メーカーをネットでつなぎ、稼働状況に応じて衣服を生産する。アパレル企業はデザインや生地の種類などをウェブで注文できる。15年に開始し、登録顧客数は7500社に増えた。

 スペイシー(東京・中央)はオフィスや店舗など企業が持つ遊休スペースを会議室として貸し出すサービスを運営する。コスト削減のために社内会議室を減らしている企業が多いことなどを追い風に、ビジネス用途を中心に累計利用者は100万人を超える。

 企業や商業施設の空き駐車場をスマートフォン(スマホ)で個人に貸し出すのがアキッパ(大阪市)だ。同社はサービス開始4年で拠点数2万となり、コイン式駐車場最大手のパーク24と肩を並べる規模に育った。

 人手不足やIT(情報技術)化の遅れもあり資産を有効活用できていない中小企業は多い。中小の生産性向上の一助にもなるビジネスモデルとして新たな分野を開拓する動きが進みそうだ。(鈴木健二朗、若杉朋子)

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