富士ソフト、鼻や耳向け「再生医療製品」に挑む

2018/5/31 11:30
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富士ソフトが再生医療製品の事業化に向けた取り組みを進める。鼻向け再生軟骨の承認を近く申請し、量産施設を数億円で整備する。再生軟骨の使い道を広げる研究も進め、このほど耳向けの臨床研究で1例目の手術に成功した。再生医療製品は国内で4品目しか販売されていない。新規承認や対象拡大が進めば市場活性化につながりそうだ。

富士ソフトが開発した再生軟骨。長さ50~60ミリメートル、幅6~10ミリメートル、厚さ3~4ミリメートル程度に培養する

富士ソフトが開発した再生軟骨。長さ50~60ミリメートル、幅6~10ミリメートル、厚さ3~4ミリメートル程度に培養する

子会社の富士ソフト・ティッシュエンジニアリング(東京・墨田、原井基博社長)が事業化を担う。鼻向けの再生軟骨は生まれつき唇や上顎に障害がある口唇口蓋裂の患者が対象。年間200人が治療を受けている。

患者の耳から1センチ角の軟骨を採取し、7週間ほど培養した後で鼻に移植する。従来は自身の肋骨などを移植する治療法が主流で、広範囲に傷や痛みが残ったり、鼻の高さを保てなかったりする課題があった。既に9例の臨床試験(治験)を終え、夏にも医薬品医療機器総合機構(PMDA)に再生医療製品として製造販売承認を申請する。

承認後の量産に向け、富士ソフト・ティッシュエンジニアリングの本社内に、再生医療製品の製造・品質管理基準である「GCTP」に適合した施設を整備する。床面積は約326平方メートルで、細胞を培養するインキュベーターなどを設置。気圧差を利用して細菌やちりの侵入・流出を防ぐ機能を備える。年に患者600人ほどに対応できる生産能力を持つ。

鼻の治療向けで実用化第1弾を目指す一方、治療の対象を広げる取り組みも進める。帝京大学と組み、2017年から鼓膜の奥が炎症を起こして難聴を招く「真珠腫中耳炎」の治療法を開発。従来は耳を切開して炎症部を取り出した跡に自身の軟骨や人工材料を埋め込んでいたが、感染症や再発リスクが高かった。

17年11月に1人目の患者に手術を施し、このほど6カ月後の経過観察で、十分に患部の形状を保っていることを確認した。帝京大医学部の伊藤健主任教授は「感覚としては患者の軟骨をそのまま埋めるより安定感があり、今後の経過に期待している」と話す。20年3月まで臨床研究を実施し、その後の治験を目指す。

国内の再生医療製品は富士フイルムグループのジャパン・ティッシュ・エンジニアリングが07年に承認取得した培養表皮が第1号。これまで4品目しか実用化されていない。経済産業省は国内の再生医療関連市場が30年に1兆円を超えると予測する。ニプロも承認申請の準備を進めている。

富士ソフトはソフトウエアの開発や販売が本業。新規事業を検討する中で、設計やシステム管理などIT関連のノウハウが役立つ再生医療分野に参入した。

(企業報道部 秦野貫)

[日経産業新聞 2018年5月30日付]

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