2018年10月23日(火)

ガスプロムが揺さぶる欧米の利害

The Economist
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2018/5/30 2:00
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ロシアの国営エネルギー大手ガスプロムほど、世界の地政学を引っかき回せる影響力を持つ企業は珍しいだろう。同社は、欧州が発電や暖房、料理などに利用する天然ガスの3分の1以上を供給している。多くの人、特に米国人は、欧州がガスプロムによるガスの供給にここまで依存するのは不健全だと考えている(左のグラフ参照)。同社はこれまで、ウクライナやポーランドなど、クレムリン(ロシアの大統領府)の不興を買った国々に嫌がらせをするために、その権力を利用してきた。そして今、欧州や中国へ液化天然ガス(LNG)を輸出する米国の企業との競争を激化させている。そのことは、貿易を巡る現在の世界の緊張関係をさらに悪化させる可能性もある。

■ガスプロムが自信過剰になる理由

ロシアのガスプロムのミレル社長(右)は、プーチン大統領に近いとして米国の追加制裁の対象となったが、強気の姿勢を見せる=ロイター

ロシアのガスプロムのミレル社長(右)は、プーチン大統領に近いとして米国の追加制裁の対象となったが、強気の姿勢を見せる=ロイター

ガスプロムは、自分たちにつきまとう「問題児」というイメージを気に入っているようだ。同社のアレクセイ・ミレル社長は、米国が4月6日にプーチン大統領に近しいことを理由に彼を米国による対ロ追加制裁の対象に指定した翌日、こう言ってのけた。「ついに自分も制裁の対象になった。つまり、我々がやってきたことは全て正しかったということだ」。2月には、投資家向け説明会で見せたスライド資料の中で、ガスプロムによる欧州への天然ガス輸出を「大きな紅茶のカップ」に例える一方で、米国による欧州へのLNG輸出は、虫眼鏡でしか見えないほんの数滴の水にすぎないと描いた。

ここまでガスプロムが自信過剰になるのには、根拠がある。同社は2014年、ウクライナ危機(編集注、ウクライナの親ロシア派政権が欧州への統合を掲げるデモに倒されたのを契機にした紛争で、ロシアは直後にウクライナ領クリミア半島を武力により自国に併合。これに対し米欧が対ロ経済制裁を発動した)を受け、輸出量が激減する中、欧州各国と合意していた欧州向けパイプラインの建設計画を一部破棄した。一方で、東へ目を向けるようになり、中国に天然ガスを送る550億ドル(約6兆円)規模のパイプライン建設計画を発表した。これは、来年にも供給を開始する予定だ。だが16年以降、欧州への供給量は記録的な増加を見せている。背景には、欧州各国で石炭の使用が低下していること、オランダで天然ガスの生産量が減少していること、そしてエネルギー需要が堅調に復活していることがある。

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