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サプリメントの危険性 アスリートは肝に銘じて

編集委員 北川和徳

1984年ロサンゼルス五輪は、日本のアスリートが初めてドーピング違反の疑いを持たれた大会でもある。競技はいずれもバレーボール男子。2選手にドーピング検査で陽性反応が出た。

まったく別々の案件で、1人は男性ホルモンの一種であるテストステロンの生成能力が通常より高いという特異体質による、まったくの「冤罪(えんざい)」だった。当時は検査、分析の技術も十分に確立されていなかったのだろう。

もう1人には風邪薬として禁止物質のエフェドリンが含まれた漢方薬をトレーナーが処方していた。選手ではなくトレーナーが処分を受けた。こちらは現在の世界反ドーピング機関(WADA)のルールでは、明らかなドーピング違反となる。選手も最長で2年間の資格停止となるはずだ。

ドーピング検査で陽性反応を示したことについて、記者会見する古賀=共同

日本の甘い認識、違反招く?

34年前のこの事例は、故意によるものではなく、選手が処罰されなかったこともあって、日本のスポーツ界でドーピング違反とは考えられていない。ただ、こうした甘い認識が、最近の日本のアスリートの意図的ではないドーピング違反の続発につながっていると思えてならない。

競泳男子の2016年リオデジャネイロ五輪代表、古賀淳也(30)が18年3月の抜き打ち検査でタンパク同化薬に分類される禁止薬物に陽性反応を示し、暫定的な資格停止処分となった。古賀は100メートル背泳ぎで09年の世界選手権金メダルを獲得した日本のトップスイマー。今夏のアジア大会(ジャカルタ)には50メートル背泳ぎの4連覇がかかっていたが、出場できなくなった。

古賀はもちろん意図的であることを否定。インターネットで購入して新たに服用した海外製サプリメントに禁止薬物が混入していたと主張している。検出された量は微量で競技力を上げる効果などなかっただろう。10年以上も国際大会でクリーンに活躍してきたベテラン。彼の主張は嘘ではないと思う。

だが、それが証明できても、2年近い長期の資格停止処分は免れない。すべてのアスリートは今回のケースを、自分の身にもいつ降りかかるかもしれないリスクとして真剣に受け止めるべきだ。

古賀は服用するサプリメントを選ぶ際、含まれる成分を確認するのはもちろん、専門家の助言も受けていた。だが、サプリメントは医薬品ではない。海外製サプリメントには時々、成分表に表示されない物質が混入した汚染サプリメントが存在する。

過去に自分で使って問題なかった、他の選手も使っている、などの理由では安心できない。ある工場である時期に生産された製品だけが汚染されていることもありえるのだ。実際、一昨年の国体で違反に問われた自転車選手は、同じ米国製サプリメントを以前から服用していて陰性だったのに、新たに購入した同じサプリメントに禁止物質が含まれていた。

タンパク同化薬の違反は原則4年の資格停止だが、古賀が意図的ではないことを立証できれば2年に短縮される。今回は原因になったと考えられるサプリメントが手元に残っていたようで、それを国内の検査機関で分析しているという。もしここで禁止薬物が検出できれば、2年後の東京五輪の代表を目指す道はわずかにつながる。

現場のコーチの理解も不可欠

ただ、日本アンチ・ドーピング機構や日本水泳連盟などは海外製サプリメントの危険性についても選手に指導している。それを考慮すると、「重大な過失はなかった」として、さらに処分が大きく軽減されるとは考えにくい。

競泳では17年9月の日本学生選手権でも、海外製サプリメントを原因とする選手のドーピング違反が起きている。このときも、製品のラベルには禁止物質が含まれているという記載はなかった。

サプリメントの服用はルール違反ではない。むしろ使わないアスリートの方が少数派だと思う。サプリメントを服用しているライバルが好成績をあげていれば、自分も使ってみたいと考えるのは普通の心理だと理解はできる。だが、汚染サプリメントの危険性はしっかりと彼らにも現場のコーチにも理解されているのだろうか。

ドーピングは意図的でなければ潔白だと許されるわけではない。安全が確信できないサプリメントは絶対に使わない。自分の夢と人生を守るために、アスリートはこの2点を肝に銘じてほしい。

(20年東京五輪開幕まであと786日)

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