2019年5月25日(土)

仮想通貨ブームの隠れた勝者

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2018/6/1 5:50
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The Economist

ユーチューバーのジェレミー・シアラッパ氏は最近投稿した動画の中で、居間に設置した赤いケースの蓋を開けてみせた。靴箱ほどの大きさの銀色の装置がうなりを上げている。中国企業のビットメインが販売する「アントマイナーS9」という装置だ。

この装置は、世界で最もよく知られる仮想通貨「ビットコイン」を使って決済された取引の確認に役立つ作業をしている。ビットコインには管理権限を持つ中央組織が存在しない。通貨として機能させ続けるためには、利用者が維持作業を行う必要がある。その作業はマイニング(採掘)と呼ばれ、それに携わった者に報酬としてビットコインが与えられる。

アントマイナーS9は、趣味でマイニングを行う世界中の人々の間で人気の装置だ。その中には189個の特定用途向け集積回路(ASIC)が収まっている。ビットコインの暗号パズルを可能な限り速く解くためにビットメインが設計したチップだ。製造は台湾の半導体受託生産大手、台湾積体電路製造(TSMC)が請け負う。

シアラッパ氏など、マイニングに熱を上げる人々は、21世紀の「フォーティーナイナーズ」(ゴールドラッシュが起きた1849年に一獲千金を夢見て米カリフォルニアにやってきた人々)といえよう。当時、実際に金を掘り当てて大金持ちになった人はごくわずかだった。しかし、彼らの宝探しを手助けした企業は大いに潤った。

例えば、コーネリアス・バンダービルト氏は東海岸からカリフォルニアを目指す人々に蒸気船のチケットを売った。リーバイ・ストラウス氏は彼らにくしや寝具などの日用雑貨を売った。さほど有名ではない会社も金のマイニングに必要なシャベルなどを売ってもうけた。

歴史は繰り返す。ビットメインは第一にマイニングを行う会社だが、同時に、ほかのマイナー(採掘者)向けに暗号シャベルとも呼べる装置を販売している。株式は非公開で、30億~40億ドル(約3300億~4400億円)ほどの利益を上げているとみられる。

マイニング用半導体の製造を受託するファウンドリーも仮想通貨ブームの恩恵を受けている=ロイター

マイニング用半導体の製造を受託するファウンドリーも仮想通貨ブームの恩恵を受けている=ロイター

ビットメインのような会社を含め、仮想通貨ゴールドラッシュでもうけている企業には3種類ある。

かつては電源とフリーソフトとコンピューターさえあればマイニングに取り組めた。しかし環境が変わった。仮想通貨の相場が上がるにつれ、マイニングの需要も高まったのだ。ビットコインは、マイニングに携わる人が増えるほどその難易度が上がる設計になっている。そうなると、汎用のハードウエアでは効率が悪い。

2011年以降、マイナーは専用の装置を使うようになり、ついにはアントマイナーS9に搭載されるような超高性能なASICも作られるようになった。デスクトップパソコンが搭載する"何でも屋"のチップと異なり、ASICは単一の作業を可能な限り効率よくこなすよう設計されている。

これらのチップは、ビットコインのマイニングに必要な暗号パズルを迅速に解くことができる。暗号を解くには、3つのデータが必要だ。ビットコインの取引の新しいかたまり(ブロック)と、ブロックチェーン(分散型台帳)の最後のブロック、そしてランダムな数字である。

この3つを合わせて演算処理し、「ハッシュ」と呼ばれる256ビットの英数字からなる文字列を生み出す。ハッシュの計算が速くできるほど、ほかのマイナーよりも早く正解にたどり着く可能性が高くなる。

■100万ドル超とみられるマイニング機も

ビットメインは、それぞれの仮想通貨が持つ暗号パズルに合わせた専用のマイニング装置を開発している。ビットメインやオランダのビットフューリーは、こうした製品に使用するASICの高性能化を進めている。ビットメインのマイニング機は、アマゾン・ドット・コムで1台1300ドル(約14万4000円)で購入できる。一方、ビットフューリーは、マイニング機を満載したコンテナ型の設備を販売しようとしている。同社は価格を公表していないが、100万~200万ドル(約1億1000万~2億2000万円)とみられる。

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