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ヒットゾーンが鍵? 打者・大谷の攻略法(後編)

スポーツライター 丹羽政善

前編では、5月4日(日本時間5日)に大谷翔平(エンゼルス)と対戦したマイク・リーク(マリナーズ)が、3打席を振り返った。後編は彼が最後に指摘したように、大谷に対する攻め方がその後どう変わっていったのかをみていきたい。

報道で知られているように開幕当初、相手投手は内角を軸に大谷を攻めた。そのことは下の図(3月29日~4月12日、捕手からの目線、「Baseball Savant」参照)からも容易に読み取れる。

これは春季キャンプ中に大谷が内角球に苦労していた印象があったからだろう。

しかし開幕直前、大きく上げていた右足のステップの仕方を変え、つま先を地面につけたままヒールアップ。インパクトで踏む込む形に変えてからタイミングが遅れることもなくなった。

つまり、対応したのである。むしろ大谷は相手の内角攻めを利用してそこに狙いを絞った。2ストライクと追い込まれればその限りではないが、ヒットゾーンが内角に集中したのも関連があるのだろう。

もちろん、それによって相手投手も対策を練り、下の図(4月13~29日、同)のように4月中旬ぐらいから徐々に外角を中心に攻めるようになった。

4月30日以降をみても、下の図(4月30日~5月22日、同)のように基本的には外角が配球の軸になっている。

そうした外角攻めの背景にはもちろん、こんなデータ的な裏付けがあるのだろう。

下の図(4月30日~5月22日、同)は大谷が最も凡打に倒れているコースを示したものだが、やはり外角低め。よって相手はそこにボールを集めている。

ただし、そんな攻めの変化に伴って、大谷のヒットゾーンもまた、変化している。何度か触れているように4月29日までは内角低めだったが、4月30日から5月22日までのデータ(同)をみると、今度は外角に集中している。

そもそも外角への配球が増えたのだから、これも当然といえば当然だが、ヒットになっているのは相手が集中して攻めているところと極めて近い。おそらく凡打になっているゾーンよりも、ボール数個分上。

図らずもここで、リークの言葉が証明されている。

「ヒットゾーンの近くに、打ち取れるコースもある」

攻める側にしてみればもろ刃の剣。ちょっとしたコントロールミスが安打にもつながる。

とはいえ、もちろん攻めるのは外角低めだけではない。そこにいたる過程で、様々なせめぎ合いがある。3月終わり、開幕戦で打者・大谷を一番近いところから見たアスレチックス捕手のジョナサン・ルクロイに聞くと、こんな話をしてくれた。

「外角ばかりにしか投げなかったら、彼だって踏み込んでくる。内角にしても同じことがいえる。内角ばかりなら、大谷だって内角に狙いを絞ってくる。どちらを軸にするにしても、1球でいいから大谷が迷うような球をその前のどこかで投げる必要がある。考えさせるんだ」

「ここで仕留める、というプランを描いたとき、その球をより効果的に見せるためにどう伏線を張るか。それ次第ではその球が平凡な球であっても、配球によっては生かせるからね」

駆け引きの妙が透けるが、今であれば相手がどう大谷の外角を攻めるかに加え、「真っすぐ高め」にも注目したいところ。

というのも4月1~30日、5月1~22日の2つの期間を比較したところ、フォーシーム、ツーシームなどファストボール系に空振りする確率が変化していた(「BrooksBaseball」参照)。

・4月 11.32%(空振り6球=対右投手5球、左投手1球)

・5月 42.55%(空振り15球=右投手11球、左投手4球)

もちろん、まだサンプルが少ない。5月はジャスティン・バーランダー(アストロズ)に4回も空振りさせられるなど、好投手との対戦が相次いだこともあるが、同時に空振りするコースにも変化がみられる。

4月、空振りするのは下の図のように主に内角だった(4月1~30日、捕手からの目線、「Baseball Savant」参照)。

これはやはり相手が内角を攻めていたこと。また、大谷が早いカウントでは内角を狙っており、その付近は多少のボールでも手を出していたことが一因として考えられる。

そのコースはしかし、5月になって変わる。

上の図(5月1~22日、同)をみると、高めの球を振らされていることがわかる。バーランダーとの対戦では真っすぐを4回空振りしているが、全部高め。そのうち3球は外角高めのボール球だった。

もちろんそれは、球界でも屈指の好投手の球だったからというのもあるかもしれないが、空振りがほしいとき、外角高めのボール球でつってくるという配球は今後もみられるのではないか。

25日、大谷と対戦したアロルディス・チャプマン(ヤンキース)が追い込んでから投じたのも外角高め。結果は遊ゴロだったが、それなりに狙いがあったのかもしれない。

さて、前編・後編の2回にわたって打者・大谷の現在地を見てきたが、もう少しはっきり何かが見えてくるとしたら、さらに打席数を重ねる必要があるだろう。相手投手もまだ、探りながらの投球だ。

今は外角への攻めが柱になっているが、大谷が適応すれば相手もまたそれに対応する。本当の駆け引きはこれからではないか。

なお今回はコースに話を絞った。

ゴロを打たせたいなら、どのコースにどの球種を投げてくるのか。早いカウントではどんな攻めが効果的なのか。追い込んだらどう攻めるのか――といった感じで、まだまだ切り口を変えて分析することもできる。今後も定期的に大谷のデータを追っていきたい。

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