2018年11月13日(火)

関西のオケ ファンと築く奏者の成長(もっと関西)
カルチャー

コラム(地域)
2018/5/25 17:00
保存
共有
印刷
その他

オーケストラが団員のリサイタルや少人数の演奏会を主催する動きが目立っている。個々の技術や意欲の向上が期待でき、オケ全体のパフォーマンスの高まりにもつながる。ファンと密接な関係を築く場にもなっている。

公演に向けリハーサルする大阪フィルの楽員ら(4月、大阪市)

公演に向けリハーサルする大阪フィルの楽員ら(4月、大阪市)

大阪フィルハーモニー交響楽団は4月13、14日、弦楽セクションだけの演奏会を開いた。フル編成以外の公演の主催は、2005年まで開いていた室内楽シリーズ以来となる。

団員から開催を望む声が度々上がっていたという。演奏の中心は首席客演コンサートマスターの崔文洙。「弦楽アンサンブルの力を高めたい」と狙いを話す。指揮者を介さない合奏は互いの音をよく聴き合い、音楽を構築する必要がある。崔は「和声の進行や音色の変化などで共通認識を強めることができた。個々の引き出しも増えたはず」と手応えを語る。

練習場を会場に

小編成の演奏会は会場の収容人数が限られ、採算が合いにくい。楽団側は及び腰になりがちだ。今回、大フィルは1日目を大阪府の吹田市文化会館メイシアターで開き、経費をホール側と分担。2日目は練習場である大阪フィルハーモニー会館(大阪市西成区)を会場として費用を抑え、実現にこぎ着けた。

ホール側としても、フル編成のオケを招くより費用を抑制できるメリットがある。大フィルの福山修演奏事業部長は「地域の人に楽団を知ってもらう機会にもなる。他の楽器セクションでも検討したい」と、次の開催を視野に入れる。

17年にオープンした大阪府の豊中市立文化芸術センター。日本センチュリー交響楽団は昨年から、年3回のペースで団員のリサイタルを開いている。楽団が同センターの運営を担う指定管理者の一員となり、楽団と団員、ホールの3者にそれぞれ有益な形で開催しやすくなった。

4月26日はクラリネットの吉岡奏絵が出演。17年の日本木管コンクールで3位の実績を持つ。ブラームスやチャイコフスキーなどオケファンに親しまれる作曲家の作品を中心に、自ら演目を決めた。団員としての活動の合間を縫って半年間の鍛錬を積んだといい「これだけの期間、集中的に練習し、本番を迎えたのは音楽家として得がたい経験だった。次への意欲にもつながる」と、充実した様子で語る。

吉岡はこれまで室内楽などの演奏会を自ら企画した経験もある。ただ、ホールの手配やチラシ作り、チケット販売など音楽以外の作業に忙殺された。「今回は事務作業をホールが請け負ってくれた。おかげで演奏だけに集中できた」と振り返る。

団員選抜のリサイタルに出演する兵庫芸術文化センター管弦楽団の吉村結実=同楽団提供

団員選抜のリサイタルに出演する兵庫芸術文化センター管弦楽団の吉村結実=同楽団提供

聴衆と距離近く

同センターとしても、通常の主催公演より費用を抑え、出演を依頼できるメリットがあるという。さらには楽団にとって、ファンと密接な関係を築く場にもなる。同楽団の柿塚拓真コミュニティ・教育プログラム担当マネジャーは「リサイタルは聴衆との距離が近い。個々の団員を深く知れば、オケを聴くときにもより身近に感じてもらえる」と期待する。

兵庫芸術文化センター管弦楽団は05年の発足以来、ほぼ全員が参加する室内楽と、団員から選抜するリサイタルを継続して開いてきた。同楽団は公立ホールである兵庫県立芸術文化センターの専属楽団として、当初から若手音楽家の育成を重要な役割として掲げてきた経緯がある。

両方に出演経験があるオーボエ奏者の吉村結実は「オケは指揮者の音楽を表現し、室内楽は奏者でコミュニケーションし作りあげる。指揮者や他の奏者の考えはソロの際に役立つ。それぞれが良い影響を与え合う」と話す。様々な編成での演奏が、奏者の確実な成長につながるはずだ。

(大阪・文化担当 西原幹喜)

今なら有料会員限定記事もすべて無料で読み放題

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報