「対中融和」象徴に終止符 米、環太平洋演習から中国排除
南シナ海でけん制強める 対北朝鮮政策に影響も

2018/5/24 17:30
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【ワシントン=永沢毅、北京=永井央紀】トランプ米政権は23日、今夏に開く環太平洋合同演習(リムパック)への中国に対する招待を取り消したと発表した。度重なる警告を無視し、南シナ海での軍事拠点化に突き進む中国をけん制する狙いだ。対中融和姿勢が目立ったオバマ前政権からの転換を象徴する動きといえるが、中国からの協力を得たい対北朝鮮政策に影響を及ぼすおそれをはらむ。

2016年のリムパックに参加した中国軍艦は米中両国の国旗を掲げた=ロイター

中国の王毅外相は共同記者会見で米国の対応に不快感を示した=AP

「中国の継続的な軍事拠点化は緊張を高め、地域を不安定にする」。米国防総省は23日の声明でリムパックへの招待を撤回した理由として、南シナ海での中国の行動を挙げて批判した。南沙(英語名・スプラトリー)諸島に対艦、地対空ミサイルを配備した証拠があるとし、警戒感をあらわにした。

リムパックは米英仏オーストラリアなどの20カ国超の海軍が参加する合同訓練で、1971年からおおむね隔年で開催する。今年は6月27日~8月2日の日程で実施される予定だ。中国は2014年に当時のオバマ前政権の招きで初めて参加した。オバマ政権による対中融和の象徴的な政策だった。

米国にしてみれば、軍の交流を進めることで不測の衝突を未然に防ぐとともに、中国軍の透明性や国際ルールへの理解を高める狙いがあった。習近平(シー・ジンピン)国家主席は17年7月、トランプ米大統領との会談で18年の演習への参加を早々と表明している。

トランプ政権は中国をロシアとともに米国の国益に挑み、国際秩序の変更を試みる「修正主義勢力」と位置づけている。オバマ政権末期から始めた人工島の周辺に米艦船を派遣する「航行の自由」作戦に中国は全く動じなかった。今回はさらに中国への圧力を強め、その動きを封じ込めようとする取り組みの一環だ。中国をこのままリムパックに招くのは、国際社会に誤ったメッセージになると判断したとみられる。

中国は激しく反発している。「非建設的で軽率な行動だ。中米の相互理解の役に立たない」。訪米中の中国の王毅国務委員兼外相は23日、ポンペオ米国務長官との共同記者会見でリムパックからの中国排除について問われ、こう批判した。

中国国防省も24日、「中国は南シナ海に争いようがない主権を持ち、必要な防衛施設を配備するのは正当な権利だ」との談話を発表。さらに「国際演習に中国を招待しようがしまいが、中国が自らの主権と利益を守る決心は揺らがない」と強調し、南シナ海での軍事拠点化を続ける考えを示した。

中国の反発は最高指導者の顔に泥を塗られたからというだけではない。中国はリムパックへの参加を米中共存の象徴と位置づけていた。14年に初めて招待された際、中国国防省は「中国と米国の新型軍事関係をさらに発展させたい」と表明した。「新型軍事関係」とは軍同士の対立を避け、信頼醸成を重ねて中国が重視する権益には踏み込まない関係を指す。

中国にはリムパックへの参加が、国際社会の責任ある大国として認められた証左という自負もあった。今後はロシアなどを巻き込んで新たな国際軍事演習の枠組みを作るとの観測もある。米中を軸にした国際協調の終焉(しゅうえん)の始まりという悲観論も聞こえる。

米中の攻防は南シナ海での勢力圏争いにとどまらず通商や北朝鮮など多岐にわたり、それが相互に複雑に絡み合う。トランプ氏は習氏が期待する中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)への制裁緩和などもカードに、中国との駆け引きに臨んでいる。

今回はメンツを潰された形の習氏は、トランプ氏が求める北朝鮮への圧力維持に応じないという形で「報復」する可能性もある。「北朝鮮の問題を解決したいなら、今がそのときだ」。王毅外相は23日、予定通りの米朝首脳会談の開催をポンペオ氏に働きかけた。その発言は米国を試しているようにも響く。

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