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通り平行のはず 京に謎の交差点(もっと関西)

とことんサーチ

京都市に移り住んだばかりの私のような転勤族を悩ますのが通りの名前だ。町名ではなく、東西と南北に交わる通りの名を組み合わせて場所を示すのが京都流。ある日、東西の通りが交わるという不思議な交差点があるという噂を聞いた。「平行する2本の直線は交わらない」と、ゆとり世代の25歳の自分でも習った。謎を探ることにした。

市中心部からタクシーに乗り込んだ。西の方に10分ほど。市営地下鉄東西線「太秦天神川駅」付近で降りると、ありえないはずの名称の交差点があった。「三条御池」だ。

「まるたけえびすに おしおいけ あねさんろっかく たこにしき」。「東西の通り名の唄」で確認する。確かに東西に走る御池通、三条通が交わっている。その事実に基づく交差点の名前が付いているのだ。

道路延伸「ありえぬ」名に

地元の人に疑問をぶつけてみた。「あれ?て思うよなぁ。京都は碁盤の目やから、まさか交わるとは思わんやろ」と、近くで35年前からクリーニング店を営む桶作喜代志さん(75)。交差点ができたのは10年ほど前。当初は名前に違和感があったが、慣れたという。

通りかかった湯浅博史さん(74)は「タクシーで三条御池って言っても通じんさかい、天神川御池とか太秦天神川駅前っていうわ」と笑った。

近くの交番に立ち寄った。「三条御池って、不思議ですよね……」。お巡りさんは「そうですね」とうなずいた。「三条と御池が交わるということで道に迷った人など来ますか」と聞くと、「それはないですね」とのことだった。

あるタクシー運転手は「『御池』と『烏丸』を間違える人が多く、いい間違えだと思って三条烏丸に連れて行かれることはある」と教えてくれた。違和感を持つ地元の人もいるようだ。

どうして三条通と御池通が交わったのか。市役所に向かった。「理由は2つあります」と、区画整理事業を担当する整備推進課の森正人係長。

1つは三条通が市の中心部では東西に走っているが、西にいくと北に上がっている。2つ目は御池通が徐々に延伸したことだ。2008年ごろに現在の太秦天神川駅近くまで達し、北寄りにカーブした三条通と交わったという。

「碁盤の目」 定め洛中のみ

次に浮かんだ疑問は、京都市は南北と東西の街路が直交する「碁盤の目」ではないのかというものだ。

京都の歴史に詳しい奈良大学文学部の河内将芳教授は「平安京の中心の『洛中』以外はその必要はありません」と言い切る。洛中は基本的には平安京の枠に基づいたものだ。鎌倉時代には北は一条通、南は九条通、東は京極(現、寺町通)、西は朱雀(現、千本通)という範囲が定着していた。この範囲から外れると、碁盤の目である必要はなかったという。

三条や御池といった呼び方は洛中のもので、それ以外の道を洛中の道路名の延長線としては捉えていなかった。河内教授は「『三条御池』のような交差点は中世や近世ではなかった」とみる。東西に走る「四条」と「綾小路」をあわせた「四条綾小路」という言葉が戦国時代の資料にあるが、各通りの間やその周辺を意味するという。

三条御池交差点の成り立ちは分かった。でも、なぜ、この名前にしたのだろうか。東西、南北の通りが交わるから通り名を交差点に付けるのは分かるが、ここでは分かりにくい。地下鉄の駅名が「太秦天神川」であるのだから、それでもいいように思う。もう一度、市に問い合わせてみた。

「交差点名をつける際、明確なルールはない」と語るのは、道路の維持管理などを手がける土木管理課の金倉正展さん。

自治会や消防署、警察署を集めて地域で定着している呼び名を参考にするのが一般的。しかし、三条御池の場合、名前を決める協議が行われた記録は残っていないという。

当時の資料や担当者の話によると「三条御池以外の案を検討した記録もない。駅前広場の再開発が主眼になっていて、いつの間にか三条御池になったのではないか」。

「三条御池」――。東西の通り同士が交わる初めての交差点であると同時に、名前の決定過程がよくわからないという二重の意味で不思議な交差点だった。

(京都支社 赤間建哉)

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